阪神佐藤輝明内野手(23)は、決勝のホームを踏んだ先輩の頭をポンとたたいた。延長11回、先頭で本田から左前打を放ち出塁。「食らいついて1本出たので良かった」。代走熊谷を送られベンチで待っていた男の顔も晴れやかになった。

同学年のオリックス山本が火をつけてくれた。2点ビハインドの8回2死一塁。スライダーを引っ張り右翼への適時三塁打とした。「とにかく、何がなんでも食らいついてやろうという気持ちでした」。

自身19打席ぶりのHランプは、5月29日ロッテ戦(ZOZOマリン)の12号2ラン以来、46打席ぶりの長打でもあった。直後、三塁まで進むと捕逸の間にホームイン。激走で同点に追いついた。「絶対に追いつきたかった。集中して走塁できました」とうなずいた。

「ヨシノブっすかね。やっぱりホームラン打ちたいっすね」

開幕前から「対戦したい投手」に山本を挙げていた。心待ちにしていたからこそ力も入った。4回は内角146キロカットボールに詰まり二ゴロ。バットが真っ二つに折れ、先端側が一塁スタンドまで飛んだ。高さ5メートル程度の防球ネットを越え、推定40メートルの“飛距離”に客席はどよめいた。「カットで、いい球でしたね」。山本の高速変化球と佐藤輝のパワーがぶつかって生まれたハプニングだった。

試合前には、1月に自主トレをともにした吉田正と打撃談議。「ここのところ打てていないのでアドバイスというか、バッティングの話もしました」。内容は「秘密」としたが、リスペクトする先輩の言葉がプラスにならないわけがない。 矢野監督も「最後も1本あったし、ノッていってくれたら」と期待を込めた。反撃適時打、同点ホームイン、勝ち越しを演出するマルチ安打。全3得点に絡んだ背番号8が、劇勝には欠かせなかった。【中野椋】

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