阪神担当記者が注目選手を深掘りする今回の「虎番リポート」は、うなぎ上りの活躍で奮闘中の島田海吏外野手(26)です。5年目で初めて定位置をつかみ、1番打者として打線をけん引。母校九州学院(熊本)の前監督で恩師の坂井宏安氏(65)が「いやらしい打者」に進化したルーツを明かし、エールを送った。【取材・構成=三宅ひとみ】

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九州学院前監督の坂井氏が、教え子島田の特徴についてこう表現した。「しみ込ませたら、なかなか忘れない」。高校時代は目立たず、黙々と鍛錬。練習や試合を重ねることで、じっくりこつこつ成長していくタイプだった。「すごく真面目で一生懸命にやります。足もあるし、パンチ力も意外とあるんですよ」。

漫画「天才バカボン」に登場する「ウナギイヌ」に似ていることから、阪神での愛称は「うなぎ」。自身も夏バテ対策として、食事会場にあれば必ず取り入れるパワーの源だ。ウナギをおいしく料理するためには、じっくり長い時間、何度も返しながら焼き上げる。島田自身も成功と失敗を重ねながら、何度も自分のスタイルを練り直し、プロで活躍するまでに成長した。

九州学院の後輩にヤクルトの村上がいる。打席で怖がられる主砲に対し、島田は当時からいやらしい打者になる資質があったと坂井氏は明かす。「どっしりするんじゃなく、ちょこちょこ動いて(野球を)するタイプ。打席に立って怖いのは村上だけど、コイツを出したくないな、ツーベースもあるもんな、嫌やなっていうのが島田のタイプ」。当時から、いやらしい打者に成長できる伸びしろを感じていた。

17年ドラフト4位で入団して5年目。恩師の見立て通り「いやらしい」打者に進化し、レギュラーの一角をつかんだ。現在、チームは新型コロナの影響で1番を担ってきた中野や近本が不在。代役のリードオフマンとして奮闘する背番号53にエールを送った。「今までは脇役だという感じがあった。でも、1番、2番も主役でもあるんです。今は、そういう自分の持ち場を分かるようになってきた。それが結果に出てきていると思います。俺らアマチュアがプロの選手に言うのは失礼なんだけどね」。

教え子が出場する試合は欠かさずテレビで観戦している。「それが夜の楽しみ。島田もファンの方やチームのためにもちゃんと頑張っているなって。最近はうれしいよりも頼もしく見ています」。熊本の地から、日に日にステップアップする姿を応援している。

◆坂井宏安(さかい・ひろやす)1957年(昭32)5月14日生まれ、熊本県出身。九州学院では、中堅手として75年夏の甲子園に出場。日体大に進学し、銚子商(千葉)のコーチを経て、84年から3年間九州学院の監督を務め、95年8月から指揮官に復帰し、20年夏を最後に勇退。春夏10度の甲子園出場を導いた。教え子に阪神島田、DeNA伊勢、ヤクルト村上ら。

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