今季のベストナインが24日に発表される。日刊スポーツ評論家・里崎智也氏(46)は、野手の成績を客観的に数値化する独自のベストナイン選出にトライ。陸上10種競技を参考にした「里崎流選出法」で浮かび上がったベストナインは…。来年以降は投手部門への展開も見据える。【データ担当=多田周平】
ベストナインが発表されると、いつも話題になることがあります。人気球団の選手が、客観的な成績よりも過大に評価されてはいないか? です。現状の報道側の体制からして、そうした不公平感というのは、拭えないのかなと感じています。
巨人、阪神の担当記者は他球団よりも圧倒的に多いのは事実です。また、ソフトバンク、楽天、日本ハム、広島、中日など地方球団にも、その地域に特化した報道が根付いています。当然、地元チームを優先して取り上げ、読者、視聴者に提供することが大切になります。
記者投票で決まるのがベストナインですから、番記者の絶対数の違いで投票結果に偏りが出るのは、そんな背景があります。
各ポジションでもっとも活躍した選手が獲得すべきタイトルがベストナインです。先述した理由から、メディア側の事情で票が偏る可能性は常にはらんでいます。ならば、どうするか? 客観的事実に即し、オートマチックに選出してみるとどうなるか。これもひとつの試みです。
話は変わりますが、陸上競技に10種競技(デカスロン)という種目があります。さまざまな種目を1人でこなして記録を計算式にのっとって数値化して競います。10種競技は「キング・オブ・アスリート」として王者の称号が与えられています。あらゆる競技に対応し、高い身体能力を証明する。そこに名誉があると、言われています。
ベストナインにも、この考え方を応用できないか? と思い付きました。こうした試みは、初手に考えたものの特権として、どういう項目によって計算するかを、ある意味勝手にやってしまえます。
ざっくばらんに言うならば「やったもん勝ち」ですね。賛否はあるでしょうが、反対意見があるからこそ、議論は先に進むものです。まずやってみる。これがあらゆるものを進歩させます。そういう前向きな気持ちでトライしました。
恐らく、ファンの皆さんのベストナインでの注目は特定のポジションになっているのではないでしょうか? 例えばセの三塁は村上で異論はでないでしょう。同様に大差はつかずとも、パの一塁山川、ショート今宮は予想の範囲内という印象を受けます。
一方で、セの一塁ビシエドやショート中野、パの三塁宗などは意見も分かれるところでしょう。さらに、セの外野手3人として丸、塩見、佐野などについて触れると、最多安打の岡林や盗塁王の近本もいて、どういう結果になるか、注目と言えるでしょう。
かなり際どい争いとなったのが、セの捕手となります。打撃成績を中心に吟味すると、それほど高いレベルの争いとは言えませんが、木下、大城、中村が競っています。規定打席に到達しているかどうか、そうしたところで微妙に差がつき、データとしては木下がトップという結果に落ち着きました。
そして、ハイレベルの争いとなったのがセの二塁です。今年のベストナインの最大の焦点とも言えるでしょう。山田が1・5ポイント差で迫っていますが、わずかに牧に軍配が上がっています。近日中に発表されるベストナインではどういう結果になるか、非常に楽しみです。
私がこのトライアルでもっとも熱くなったのが、パの外野手3人目で高部が食い込んだことでした。皆さんの予想からすると、柳田が強かったのではないでしょうか? しかし、恣意(しい)的要素を排除して、個人成績を数値化した客観的データとしては高部という結果になりました。それも4ポイントの差をつけています。
各項目のポイント換算は、別表の通りで、ここから弾き出された数字だけで選ぶと、こんな顔触れになりました。皆さんの予想とどれだけ違いがあるか、そして記者投票による決定メンバーと比べた時、いろんな感想が出てくると思います。
1年間、選手が戦った結果です。こうして見ると、数値化したベストナインにも、各選手の踏ん張りと健闘が見て取れます。(日刊スポーツ評論家)
◆ポイントの設定 10点をプロ野球記録付近に、3~4点を最近10年のNPBの平均値をもとに設定。しかし、打点(最多は161)、盗塁(同106)、打率(同3割8分9厘)など近年のトップとも大きく差がつく項目が多いため、10点の基準を低くし、超える分には加点する方式にした。また、10刻みの項目に関しても、少しでも差がつくように、0・5点ずつの加点にした。