ロッテ池田来翔内野手(23)が9日に放ったプロ初本塁打には続きがあった。

西武-ロッテ戦(ベルーナドーム)の7回、池田の放物線は、西武ファンが応援するレフトスタンドに飛び込んだ。前から3列目と4列目に座っていた東京・あきる野市在住の西武ファン一家、石川家6人の横に。悔しい気持ちとは裏腹に、思わず体が動き、飛び付いたのは野球部に所属する中学2年生の石川啓太郎くん(13)だった。

だが、わずかに届かず。ホームランボールは隣の集団との間に。空席だった3列目座席の背もたれにボールが当たり、地面に落ちた。走った。だが、そのボールを一瞬早く拾い上げたのは、同じく西武ファンの中年男性だった。お互い、目があった。男性は迷いなく、野球少年にホームランボールを差し出した。お互いが笑顔になった。お礼を伝えた啓太郎くんは、ボールを手に家族のもとへ。家族でボールを持って記念撮影した。啓太郎くんはすぐに男性のもとに駆け戻った。「拾った方にも撮影してほしかった。優先権はおじさんにあるし、悪いなと思って」。喜びを共有した。

さらに事態は変わった。球団関係者が訪れ、「池田選手のプロ初本塁打なので、ご返却いただけないでしょうか…」。自身にとっては初のホームランボールだったが、プロ野球選手の記念の日に携われたことだけでも喜びを感じ、誰に言われるでもなく、快く手渡した。

その直後の7回裏、西武の応援が始まった。逆転を信じて。またサプライズが起きた。次は外崎修汰内野手(30)からのプレゼントだった。またもホームランが啓太郎くんに向かってきた。再び、必死にグラブをはめた右手を伸ばした。「パンッ」。乾いた音、そして少しだけ手の痛み。本人も驚きのダイレクトキャッチ。両親、4人のきょうだいで抱き合って喜んだ。

これだけではない。そのイニングが終わると、再び球団関係者が啓太郎くんのもとに。その手には白いバッティンググローブ。半信半疑のまま「池田選手からのお礼の品です」と手渡された。最初はなんのことか、理解出来なかった。見ると、そこには池田のサインが両手に入っていた。青い色も入って、どことなくライオンズカラー。茶色の汚れは、まさに先ほどまで使用していた証しだった。

喜びと興奮の中、ふと我に返った。「あのおじさんのおかげだ」。左投げ左打ちの啓太郎くんは、右手用をギュッと握り締めたまま、男性のもとへ再び歩みを進めた。自分の判断で。「おじさん、これもらってください」。左手用を差し出した。また、喜びを分かちあうことが出来た。

年に数回、西武の応援に、家族みんなでベルーナドームに試合観戦に行くことが楽しみだった。池田のホームランボールから始まったサプライズデー。バッティンググローブのみならず、外崎のホームランボール。キャッチしたグラブはファンクラブイベントで寄贈された源田のサイン入りグラブ。どれもが「一生の宝物です」と目を輝かせる。

「僕は西武ファンですけれど、プロ野球が大好きです。敵も味方も関係なく、これからは池田選手も応援していきます」。池田の好意に感謝した。「僕の目標は…」。少しだけ考えた。「僕も初ホームランを打ちたいです。このバッテ(バッティンググローブ)をつけて」。【鎌田直秀】

▼ロッテ池田(石川家の喜ぶ様子を知り)「おかげさまでホームランボールは今、自分の実家にあります。こんなに喜んでいただけるなんて、本当にうれしいですね。僕ももっと頑張ります」

▼石川啓太郎くんの父勝さんから池田へのメッセージ 初ホームランおめでとうございます。記念すべき日にこのような形で携われたこと、うれしく思っております。池田選手が実際に使用されたサイン入りバッティンググローブを手にした時、こんなに素晴らしい物をいただけるとは思っていなかったので、啓太郎は『一生の宝物にする!』と言って大変興奮して喜んでおりました。ますます部活の野球を頑張るそうで池田選手のお気遣いに感謝いたします。うちは西武ファンではありますが、池田選手の活躍を楽しみにこっそり応援したいと思います。子供に夢と希望をありがとうございました。

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