阪神湯浅京己投手(23)はクールな表情に本音を隠していた。

「心で“キリ、ごめん!”って叫んでました。力んじゃってヒヤヒヤでした」

右腕コンディション不良から復活し、1軍昇格即復帰登板。逆転した直後の8回にマウンドに上がり、四球と安打で2死一、二塁のピンチを作った。

同学年でもある桐敷の初勝利がかかった試合でやられるわけにはいかない。侍ジャパンで共闘した岡本和を、この日最速タイの151キロで中飛に仕留めた。1回無失点。「アツアツでした!」とお決まりのセリフも飛び出した。

4月16日に出場選手登録を抹消されて間もなく、太平洋の向こう側から連絡が入った。「大丈夫?」。WBCを共に戦ったパドレス・ダルビッシュがLINEを送ってくれた。

「サプリは、これ飲んだ方がいいよ、ご飯はこういうことに気をつけた方がいいよって。ありがたかったです」

すぐにサプリメントを購入。成長ホルモンの分泌を促すアルギニンを10グラム、筋分解を抑制する効果のあるグルタミン5グラムを、2時間おきに摂取した。「朝起きてすぐ、そこから寝るまで2時間後、2時間後、2時間後…」。味はない粉末を毎日水で流し込んだ。

血液促進効果があり、患部の炎症を抑えることにつながる必須脂肪酸「EPA」を多く含むサバを求め、練習帰りにスーパーに通った。オフから1人暮らしを始めた右腕は「料理はちょっと…。しめさばとか塩焼きを買って食べるんです」。1軍復帰のため、ダル先輩の教え通りに実践した。

当初は連投テスト後に昇格するプランもあった。ただ、大型連勝で救援陣に負担がかかっており、この日の2軍戦登板も飛ばしての前倒し昇格。岡田監督は「楽な場面」での起用を想定しながら1点差の8回に起用し「厳しい場面を抑えてくれた」とたたえた。

どんな場面でも期待に応える右腕は「今度は自分が支えられるように」ときっぱり。首位を走る虎に、頼もしい男が帰ってきた。【中野椋】

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