涙を流す後輩をよそに、阪神近本光司外野手(28)は冷静だった。両軍無得点の7回2死一、二塁。巨人グリフィンから先制の中前適時打を決めた。相手失策で二塁に到達しても、表情は変わらない。ヒーローインタビューで大竹がベンチで号泣していたことを聞かされると、ようやく満面の笑みを浮かべて言った。「全然知らなかったです」。

岡田監督の勝負手に応えた。7回無失点に抑えた大竹に、直後の攻撃で代打渡辺諒を投入。2死二塁から渡辺諒が四球でつなぎ、回ってきたチャンスだった。

岡田監督 あそこしか勝負かけるとこなかったんで。大竹の勝ち星とかもあるけど、ゲーム展開的には中川とか大勢とか、あのへんで来るわけやから。

1点を争うゲーム。巨人の終盤の継投を見据え、好投していた先発左腕を切った。そして、選手会長が値千金の一打で報いた。中野も2点適時打で続いた。前日の試合後に「明日は打つやろな、1、2番はな」と、指揮官が予言していた通りの連打が飛び出した。

1番打者ながら26打点はリーグ5位タイ。勝利打点「4」で、得点圏打率は両リーグトップの5割だ。勝負強さの要因を問われた背番号5は「不思議ですねえ」と笑うが、心の余裕が背中を押した。

近本 (カウント)3-2になった瞬間、楽になりましたね。シングル(単打)でいいやって。

4球で追い込まれても、ファウル3つでフルカウントまで持っていった。2死の場面、2人の走者は自動的にスタートを切る。単打でも生還の確率は上がる。「イメージ通りですね」と、自らの粘りで生み出した流れを味方につけた。

「そんな簡単じゃないよ…! でも、イメージしていたボールを打てるかどうかだと思うんで」。この日は、それを打ってみせた。クールな顔に戻り取材エリアを後にした男が、頼もしかった。【中野椋】

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