巨人松田宣浩内野手(40)が今季限りで現役引退することが27日、分かった。28日にも会見で正式表明される。05年大学生・社会人ドラフト希望枠でソフトバンク入りし「熱男」の愛称で親しまれた。通算1832安打、301本塁打、991打点を積み上げた。侍ジャパンの一員として13年、17年のWBCに出場。ソフトバンクでは6度のリーグ制覇、7度の日本一に貢献した。プロ18年目の今季から巨人に加入。40歳を区切りにバットを置く。

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まだ残暑の厳しい9月上旬だった。松田はお気に入りの焼き肉店で肉をひっくり返しながら言った。「こんなに幸せな野球選手いないよね」。やれることはやり切った。昨季まで所属したソフトバンクで黄金期を築き、今季から家族も自分も大ファンだった巨人のユニホームをまとった。家族を福岡に残して単身で上京。野球人生を懸けた。

1軍ではここまで11試合の14打数1安打にとどまった。多くをジャイアンツ球場の2軍で過ごした。夜9時に就寝し、起床は朝6時半。黒土のグラウンドで若手と汗を流し、一番大きな声を響かせた。「1軍だから、2軍だからとかそんなこと関係ない。プレースタイルが変わるわけでもないし。18年目だけど巨人は1年目。全部が新しい1日」と己の野球道を貫いた。

11年オフにメジャー挑戦を決めた川崎宗則から「俺みたいなキャラはこれからマッチがやってくれ」と元気印を託された。本塁打後は「熱男」のパフォーマンスで、沸き立つスタンドと呼応した。「走攻守」に「声」の4拍子を追求。周囲を鼓舞し、盛り上げた。「周りに影響を与えるってことは自分も結果も出さないといけないでしょ」と自らを律し、栄光と実績を積み重ねた。

プロ1年目から40歳までプレーすることが漠然と1つの目標だった。タイトルを取れるような、抜きんでたものはないとも自負していた。「じゃあ、何が大事かって言ったら元気でグラウンドに立ち続けること。体が丈夫で息の長い選手になりたい」と長くプレーするために技術を磨き、強い肉体を作り上げた。

14年から20年にかけては815試合連続出場。21年6月10日広島戦では三塁手で1775試合出場のパ・リーグ記録を樹立した。当初は苦手だった守備でも7年連続を含め、8度のゴールデングラブ賞に輝いた。闘志をたぎらせ、声を張り上げ、グラウンドに立ち続けてきた。「まだまだ野球が大好きですから」と最後の最後までシーズンを全うする。「熱男」松田宣浩は熱い気持ちのまま次の舞台に向かう。【上田悠太】

◆松田宣浩(まつだ・のぶひろ)1983年(昭58)5月17日、滋賀県生まれ。岐阜・中京高-亜大を経て、05年大学生・社会人ドラフト希望枠でソフトバンク入団。08年からレギュラーに定着し、11、13~19年ゴールデングラブ賞、18年ベストナイン。13、17年WBC、15、19年プレミア12日本代表。三塁手で1832試合出場はパ・リーグ最多。22年限りでソフトバンク退団。今季は巨人でプレー。180センチ、86キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2000万円。

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