阪神中野拓夢内野手(27)が、来季の選手会長に就任することが5日、分かった。3年間務めた近本光司外野手(28)からバトンタッチ。38年ぶりの日本一に貢献した不動の2番が、球団史上初のリーグ連覇を目指す虎のリーダーとなる。

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中野が日本一もつかんだ。世界一に輝いた3月のWBCに続く、ダブルの歓喜だ。「世界一になってリーグ(優勝)して、最後は日本一だけ。これだけいい思いをできたのは、自分の野球人生の中でもいい財産になる」。日本シリーズも2番を勤め上げ、打率3割2分で勝利に貢献。3月とはまた違った頂点の景色をかみしめ、激動の23年を最高の形で締めた。

来季からは選手会長に就任。ニューリーダーには幼少期から大切にしてきた意識がある。山形で小学3年で始めた野球。卒業文集につづったのは「チームワーク」についてだった。「エラーやミスをしても『どんまい』と声をかけあうことを意識してやりました。チームワークを大切にしないと試合に勝てないし、負けていても逆転できないので、やっぱり必要だと思います」(原文抜粋)。攻守にチームを救った好プレー。その根底には小学生の頃からの「仲間意識」がある。

いい時ばかりではなかった。8月には25打席無安打の苦しい時期も経験。打ち方を見直すなど、打開方法を模索した。だが、「そこがあまりよくなかった」と振り返る。「いい意味で考えない。どうしてもエラーしたり打てない時は、細かいことを考えてしまう。考えすぎて、またミスをしてしまったりするので」。超満員の甲子園で、重圧をはね返すのは「平常心」と気付いた。壁を乗り越えて、初の最多安打も獲得した。

シーズン143試合、CS、日本シリーズ全てフルイニング出場。WBC出場選手では球界初の“完走”だ。来季目指すは球団初のリーグ連覇。先頭に立ってチームを引っ張り、黄金時代を築く。【波部俊之介】