阪神は15日、前西武の元山飛優内野手(26)の獲得を発表した。背番号は未定。内野のユーティリティーとして期待されている。
10月27日午前、静寂のベルーナドーム。不意に物音がした方を振り返った。スーツ姿の元山がいた。
隣接の球団施設では他の選手たちが秋季練習に励む。あまりに雄弁だ。
「えーっ…」と思わず絶句し、どんな表情をしていいか分からない記者に、元山は言う。苦笑いもせず、さわやかにほほ笑んで「まずは話、聞いてきますね」。数時間後、戦力外通告が発表された。
名刺を渡したのは24年の夏の終わり。それまでたまに手伝いで西武の取材現場を訪れた私に、いつも「こんにちは!!」とあいさつで先制攻撃してくれたのが、元山だった。
3度くらい先制され、当方からも仕掛け始め、6度7度と繰り返したのちにようやく名刺を渡すタイミングができた。
取材記者をはじめ、プロ野球の現場にはたくさんの「ユニホーム組以外」の人がいる。それでも元山は誠実に接しようとする。
「球場におるし、何かしら関係している方やと思うので。失礼がないようにと言ったらあれですけど、この先どこで関わらせてもらうか分かんないんで。僕は選手側なので、ちゃんと覚えてもらえるように、くらいの意識ですかね」
強肩を生かした深めの守備位置にバットコントロール。猛練習で培った技術へのプライドをしっかり持ちながら、元山は“俺はプロ野球選手”のような空気を感じさせない。
ヤクルト時代からつば九郎と仲良しで、西武でもバック転で有名なレオとよく絡んだ。「目立ちたがり屋なんで」とごまかすが、相手へのリスペクトが根底にある。目立ちたがり屋でもあるけれど。
サヨナラ勝利の時は誰よりも先に、ヒーローのもとにすっ飛んでいき、水をぶっかけた。
今年4月27日、「おかわり君」こと中村剛のサヨナラ打の時だけは、間違えて経口補水液をぶっかけて「目、痛いわ~」とイジられたけれど。
盛り上がるのが好きだから、盛り上げる。人の笑顔が大好きだ。
一方で体調を崩し気味の記者に頼み事をした時は「かぜでつらい時にすみません。ゆっくり寝れる時は寝てくださいね」と、ちゃんと言葉を添えてくる。
人生の機微を知る人だ。漫画「ドラえもん」での「しずかちゃんのパパ」の名セリフが浮かぶ。
「あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それが一番、人間にとって大事なことなんだからね」
知る限り、元山飛優もそんな人。来季から、甲子園での歓喜の先頭に彼が走っている。【金子真仁】



