プロ野球による史上初の「球団説明会」が、今年中にも開催される可能性が高まった。プロとアマチュア3団体は14日、都内で協議し、プロ側がアマ選手に対する説明会の開催を正式に要望、アマ側も賛同の意を示した。新日本石油ENEOSの田沢純一投手(22)が昨年、日本のプロを経由せずレッドソックス入りしたこともあり、優秀な人材の海外流出防止を念頭に置いたものとみられる。開催時期はこれから協議されるが、早ければ今オフには10年ドラフト候補の早大・斎藤佑樹投手(2年)らを対象として説明会を行うことになりそうだ。

 日本プロ野球界初の試みが、現実的なものとなってきた。「佑ちゃんメジャー流出阻止」へ、12球団が一丸となって具体的な動きを示した。この日、アマチュア側に対し、会社説明会ならぬ球団説明会の開催を正式に要望。昨年9月のプロアマ連絡会でもアイデアは出ていたが、プロ側のスタンスをより具体的に伝えた。ドラフト候補選手に日本の球団の魅力を知ってもらおうと、前例のない手段でアピールする考えだ。

 一般企業に就職する学生は、就職活動の序盤で会社説明会に出席し、志望する企業を詳しく知る。しかし野球界に同様の流れはなかった。理由は明確。長らく日本のプロ球団はアマ野球選手にとっての最終目標だった。説明などしなくとも、トップ選手が入団を希望するのは当たり前だった。

 しかし昨年、田沢投手により「直接メジャー行き」という新たな道が示されたことで、状況は変わった。高校生、大学生がメジャー球団へ入団することを希望した場合、現在のルールで阻止することはできない。それならば日本のプロの魅力をしっかり説明して「抑止力」を働かせたい、と考えても不思議ではない。

 巨人の清武英利球団代表は「米国に行くという選択肢も出てきている。12球団合同で(プロの)魅力を伝える機会があっていいんじゃないか」と説明した。ヤクルトの倉島球団専務も「入る前にどんな企業か(球団の)母体を知るのは大切」との意見を述べたという。各球団は育成方針や施設の充実度などを事前に知らせることで、メジャーに対するアドバンテージも示せると考えているようだ。

 昨年9月の連絡会でアマ側は「これは12球団の総意なのか」と疑問を持っていたこともあり、結論を保留していた。それが今回の協議では基本的に賛同の意思を表明した。日本野球連盟の鈴木義信副会長は「日本の野球をアピールするのはアマにとっても大事。前向きに検討したい」と話した。

 現時点で問題になっているのは開催時期。学生側はプロ志望届を提出した後の時期なら応じるとしたが、プロ側は「プロ志望選手に限らず広く説明したい」と、さらに早期段階の説明会を希望。アマ側は再検討することになった。

 清武代表は「試行的に3月までに1度、やってみたい」と意欲を示した。来年のドラフト候補選手に対しては今年11~12月の開催を望む意見もある。実現すれば、早大・斎藤投手の“就活”は球団説明会からスタートすることになりそうだ。

 [2009年1月15日8時30分

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