25日に膵臓(すいぞう)がんのため死去した土井正三氏(享年67)の葬儀・告別式が29日、東京都大田区の池上本門寺で営まれた。二塁手として巨人の9連覇に貢献し、オリックス監督を務めた故人をしのび、野球関係者ら約300人が参列。会場の外でもファン約300人が別れを惜しんだ。戒名は現役時代の巧みなプレーを表した「専心院法巧日正居士」。

 弔辞を読んだのは、巨人V9の監督を務めた川上哲治氏(89)だった。祭壇に飾られた笑顔の遺影に向かい「守備や走塁がどれほど大事か。ファンの野球を見る目を変えた君は、日本一のチームプレーヤーになった。王、長嶋が気の抜けたプレーをすれば、真顔でかみついた。君なくしてV9はなし得なかった」と感謝。「V9は遠い伝説となったが、心は1つだ。土井よ、ありがとう。さようなら」と別れを告げた。「土井君」という故人への呼び掛けが、最後には「土井よ」となる約15分の大弔辞だった。

 喪主の長男健一さんは、土井氏が07年2月の手術を前に妻宣子さんに手紙を書いていたことを明かした。「病気と立ち向かって、必ず笑顔で生還してみせるよ。この一家は私の誇りです」と記されていたという。ひつぎは黒江透修氏、堀内恒夫氏らV9戦士を中心に運ばれた。最愛の家族と仲間に見送られ、球史に残る名脇役が旅立った。【高宮憲治】

 [2009年9月30日8時55分

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