<阪神5-8巨人>◇8日◇甲子園

 やはり並のルーキーじゃない。8日の阪神戦。1点差に迫られた直後の5回、ドラフト1位長野久義外野手(25)が左中間に2号3ランを放ち、突き放した。1発だけでなく今季3盗塁目も成功させ、新人での「2ケタ本塁打&2ケタ盗塁」達成への夢もふくらんできた。1位中日が敗れたため、首位タイに浮上した。

 巨人長野が、ひと振りで敵地の虎ファンを沈黙させた。5-4と1点差に迫られた5回2死一、三塁、阪神江草から2号3ラン。広い甲子園も関係なし。「追い込まれたら厳しい。思い切って行きました」と初球の内寄り129キロを左中間に突き刺した。直前の4回、先発内海が4点を失い、1点差に詰め寄られていた。5回の攻撃も2死となり、流れは明らかに阪神に傾いていた。豪快な1発で逆流を押しとどめた。

 長打だけじゃない。4回は先頭で左前打すると、阿部の打席に二盗。阿部の中前打で5点目のホームを踏んだ。足で稼いだ得点で、阿部の前の6番に起用した原監督の狙いに応えた。「つなぐつもりで。僕は本塁打を打つ打者じゃない。巨人には他に打つ人がたくさん、いますから」と役割を理解している。それでも、甲子園の本塁打には価値がある。プロ14年目の小笠原も前日にようやく1本目を打った。巨人の新人で、甲子園で打ったのは01年阿部以来。58年長嶋茂雄以来、巨人新人2人目の2ケタ本塁打&2ケタ盗塁も視野に「社会人NO・1野手」という入団前の評価を証明中だ。

 笑顔でグラウンドを離れたが心中は期するものがあった。7日、木村拓内野守備走塁コーチが亡くなった。チームは勝ったが、スタメン出場も無安打。1日遅れの手向けの活躍に「本当に、もう、みんなで戦うしかない。タクさんの分までという気持ちはみんな持っています」と込み上げる思いを口にした。

 1カ月前のこと。3月2日、新人選手研修会で木村拓コーチの講演を聴いた。川崎市内の寮から都内ホテルへ、同期の新人8人と向かった。道中、「ちょっとコンビニに寄るね」と仲間に理由を告げず入った店で、全員分の筆記用具を購入した。会場では最前列の真ん中に座り一言一句に耳を傾けた。「タクさんが、どう壁を乗り越えていったのか勉強になりました」。この日の1発は、天国の先輩にも届いたはずだ。

 今季最初の伝統の一戦を勝ち越し、中日と同率首位に浮上。原監督は「素晴らしい選手がジャイアンツに、プロ野球に入ってくれた」と長野に最大級の賛辞を送った。長野は「何事も全力でやりたいと思って臨んでいます」。9日、中日との首位決戦も同じスタンスで戦う。【古川真弥】

 [2010年4月9日7時57分

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