<日本ハム3-1巨人>◇19日◇札幌ドーム
これが究極の“恩返し弾”だ。日本ハム二岡智宏内野手(34)が古巣巨人から初アーチ。1点を先制された直後の6回、同点に追いつくと、ゴンザレスから左翼席に勝ち越し4号2ランを放った。09年秋の日本シリーズで苦杯をなめた本拠地で巨人を連破して3連勝。交流戦に限れば5勝1敗で首位タイをキープ。最下位からの反撃態勢が整ってきた。
執念がこもった軌跡の行く先を信じ、みんなが立ち上がった。二岡と巨人。2つの主役で、ドラマチックな一振りが完結した。6回、同点としてなおも2死二塁。ゴンザレスの甘く入ったスライダーを、バットに乗せた。左翼席最前列へ飛び込む決勝2ラン。観衆3万9738人のスタンディングオベーションを浴びた。ベンチではチームメートから手荒い祝福を受けた。
プロ入りから10年間、主力を務めた古巣を連破した。思い入れ深い初アーチを、あえて心静かに受け止めた。「何て答えれば一番いいのか分からない。意識はないですね」と言葉を選んだ。紆余(うよ)曲折を経てたどり着いた日本ハムで、記念すべき12球団制覇弾をかけた。バットの先だっただけに「(外野手は)越えたかなという感じでしたけれど、まさか入るとは」と遠くを見つめた。見えない力に押されたかのような、最後の一伸びだった。
移籍2年目。巨人時代との違いにも適応し、存在価値を高めてきた。両ふくらはぎに故障の不安を抱えながらも、チーム方針で怠れば罰則もある「全力疾走」を凡打でも励行。08年オフのトレード移籍時に、球団から通達された事項を、傷んだ体にムチを打ちながら順守している。若手主体のチームで、手本の1人になってきた。
ノビノビした明るいチームカラーにも、マッチした。試合前のロッカー室では、森本らから標的にされ「いじられキャラ」で盛り上げに一役買うことも。この日のように4番、時には下位打線に代打、そして三塁の守備にも就くなど、複雑な起用法にも適応した。「昨年の1年があったので、もう慣れてきました」と新しい居場所を見つけた。昨季から対戦13打数6安打の打率4割6分1厘、4打点。巨人キラーになった。
因縁深い一撃が3連勝へとつながった。6回の巨人の先制弾は、遊撃のレギュラーを奪われる形になった坂本。梨田監督は「目の前で坂本が打ったというのもあるだろうしね…」と、二岡の心中を思いやった。交流戦首位タイをキープし、単独最下位から1歩前進する楽天と並ぶ5位タイとする価値ある白星。二岡は「チームがいい状態なので、続けていきたいです」と特別な感情を抑えるように、今だけを見つめた。数奇な運命と向き合ってきた勝負師は、静かにケジメをつけた。【高山通史】
▼二岡が6回に勝ち越し2ラン。巨人戦では初アーチとなり、これで現12球団すべてから本塁打を記録。セ、パ12球団となった58年以降、全12球団から本塁打を打ったのは18人目。楽天誕生後は15人目だ。この日は4番で出場。二岡の4番は巨人で1試合、日本ハムで7試合の通算8試合目だったが、4番での1発も初めて。二岡の打順別本塁打を出すと、1番9本、2番48本、3番36本、4番1本、5番10本、6番6本、7番50本、8番4本、9番0本、途中出場1本。まだ本塁打を打ってないのは9番だけ。9番で打てば史上初の「全球団+全打順本塁打」となる。
[2010年5月20日10時56分
紙面から]ソーシャルブックマーク



