トラに異色の育成選手が誕生した。阪神と育成契約を結んだロバート・ザラテ投手(23)が30日、群馬・高崎市内のホテルで入団会見を行った。“群馬のチャップマン”の異名を持つ最速153キロ左腕は「不可能はありません」と160キロ超えに自信。16歳でサーファーから転身し、2年後にアメリカ行きの切符をつかんだ異色の経緯も明らかになった。来日後も成長はとどまることを知らない左腕が勝利の方程式を目指す。

 トラが猛アタックで獲得した左腕は、大化けするかもしれない。野球を始めたのは16歳。それまではなんとサーファーだった。赤道直下の降り注ぐ太陽を体中に浴び、波に乗る男の身体能力は誰が見ても突出していた。「周りの人が『お前は上手だ』って言うから」とそそのかされてボールを握ると、めきめき頭角を現した。わずか2年でブルージェイズ傘下ルーキーリーグと契約し、プロの道を歩み始めた。

 成長はとどまることを知らない。BCリーグ群馬に入団した今年8月の最速は144キロだった。10月の同リーグ戦では153キロをマーク。3カ月で実に9キロの球速アップに成功した。「1年ちゃんとトレーニングすれば155キロ以上は出せる」という言葉は誇大妄想ではない。

 DNAが素質を物語る。兄マウロ・ザラテも、パドレス傘下に所属するプロ野球選手だ。メジャー経験のある右腕投手に阪神がかつて触手を伸ばした因縁もあった。その弟が来日する情報を聞き入れ、球団はすぐさま調査に乗り出した。

 グラブには「座羅手」と、漢字で自らの名前を刻み込む。日本人の心を持つ左腕には、早くもチームへの忠誠心が芽生えている。「最初にいい話をしてくれたチーム。初めてチャンスをくれたチームに、賭けてみようと思う」。ジャパニーズ・ドリームを実現するために-。中南米で波に乗り、群馬でチャップマンと呼ばれた左腕が、トラで一番出世を目指す。【鎌田真一郎】

 [2010年10月31日11時30分

 紙面から]ソーシャルブックマーク