<巨人1-2ロッテ>◇14日◇東京ドーム

 「我々のお城」に戻っても、なぜか城主はおとなしい。巨人がロッテに競り負けて、借金が今季最多の5に膨らんだ。故障者が復帰した自慢の「ベストメンバー打線」が、延長10回まで5安打1得点。1回、巨人アレックス・ラミレス外野手(36)の適時二塁打で先制したが、2回無死二塁の好機を逃してからは得点圏に走者を進められず、散発5安打。最後は延長10回、救援陣が力尽きた。統一球の影響なのか1発攻勢ができず、昨年貯金20の東京ドームで4勝10敗の異常事態。5年ぶりの交流戦の負け越しが決まった。

 1回以外は、論ずるに値しない。なすすべのないゲームだった。敗戦の巨人原監督は、会見の席にドッシリと座り話し出した。

 原監督

 初回にうちの4番がタイムリーを打ちながら、全力で、いいムードの中、戦いながらも、1点しか取れなかったということですよね。この上ないスタートを切りながら、その辺がね。何と言っていいか分からないが、全力で準備して戦っている中で、こういうゲームになる。「仕方がない」という言葉は、ないかもしれないけど。それぞれが、まだまだ準備をしっかりしないといけない。

 1回の先頭、亀井が効果的なヘッドスライディングを披露し、セーフティーバントを決めた。右手薬指の骨折は完治していない。ベースカバーの投手に踏まれる危険も顧みない、技ありの走塁だった。そこから坂本犠打、ラミレス適時打。流れるような理想的な先制点だった。だが、3回からは二塁も踏めない。原監督も「スミ1」に困惑するばかりだった。

 2年目のロッテ大谷を「ベストメンバー打線」が攻略できない。打者の手元で変化させる、持ち味を演じさせてしまった。「空振りを恐れて、よく見過ぎている」と岡崎ヘッドコーチは指摘する。悪い結果を恐れるあまり、慎重な打撃になる。積極性を失った打線は、回を追うごとに萎縮した。責任感が強い、キャリアのある選手が並ぶから、みなが結果を背負い込んでしまう。主将の阿部も「オレが打てなかったってことだね」と、つぶやいた。

 せっかくの精神的優位をフイにしている。大谷は「投げていて、やっぱり怖かった」と巨人打線を振り返る。9回から2イニングを無失点に抑え、今季初勝利の薮田も「いっぱい、いっぱいです。本塁打バッターが多いし、気が抜けないですよ」と話す。束になって襲いかかれば、のみ込める隙はあるはずなのに…。

 借金は3年ぶりの「5」に膨らんだ。特に、原監督が「我々のお城」と呼ぶ、本拠地・東京ドームで勝てない。14試合で24得点と、1試合平均は1・71点。昨季は42勝22敗の勝率6割5分6厘と、圧倒的に勝ち越したが、この日で3連敗の4勝10敗。東京ドームだけで借金6だ。今日15日は左腕・成瀬が予想されるが、岡崎ヘッドコーチは「左が来るからと言って、右を並べるようなことはない。今のメンバーはこれ以上ないメンバーだから」と、左右ジグザグの現オーダーでの復調を待つ構えだ。前日、原監督は「自分への疑心はダメ」と、己を信じたスイングができれば、活路は開かれると言った。今日こそ、吹っ切れた姿を見たい。【金子航】