<ヤクルト2-0巨人>◇21日◇神宮

 巨人が単独最下位に沈んだ。連敗ストップに向け、1番に高橋由、3番に坂本、5番に長野を据えるなど、4番阿部以外の打順をすべて変更した新打線で臨むも、散発5安打でヤクルト先発赤川にプロ初完封を許した。前回登板で1安打完封の先発沢村も1回に2点を失い、主導権を相手に渡してしまった。4連敗で今季12敗目、借金は6に増え、2連勝したDeNAに代わって最下位に転落した。

 どうやら、巨人は弱いのかもしれない。カクテル光線と、ファンのため息を浴びながら、原辰徳監督(53)は、神宮の三塁側ファウルゾーンをクラブハウスへと歩む。4月ながら、単独の最下位転落という指摘に「現実をしっかり受け止めないといけませんね。今後、前へ前へ進まないといけませんね」と、はっきりとした口調で応えた。

 大幅な打線変更が奏功しない。4番の阿部以外は総シャッフルした。「枢軸」と呼ぶ4人を3番から並べ、村田で得点を奪う布陣。こだわった「阿部-村田」の並びを離した。不振の小笠原は外した。てこ入れは大胆だったが、打撃はしおらしく沈黙した。9回1死の坂本の二塁打まで、二塁も踏めない貧打だった。打線変更の意図を問われた原監督は「時間がたったら言うけど、今の状況では言えないな」と沈黙した。

 大型補強を敢行し、開幕前はどれだけ勝つかが焦点だった。だが、フタを開ければ貧打の連続。6度目の完封負け。負けの半分は0点という寂しい結果だ。

 打てないのには理由がある。「いい投手に、いい投球をされれば、なかなか打てるものではない」。これが球界の共通認識。とはいえ、この日の赤川は、甘い球も投げた。投手不利、打者有利なカウントで、甘いボールが幾度もあった。狙い通りの球が来ても、今の巨人打線はファウルを打ち上げる。一発で仕留めきれない。そこが、巨人打線の不振の第1の理由だ。失敗が続くと、今度は失敗を恐れる。メンタルな部分で、自分を追い込んでいる。

 決して無策ではない。長野と加治前で二ゴロが4つ。結果は凡退でも、右打者による左投手攻略法を意識した副産物だ。データを使った打撃を、去年までの巨人は苦手にしていた。戦略室ができた今季、データ利用法に取り組んでいる。現状は途上だが、意義のある凡退や見逃しが増えているのも事実だ。

 打てない理由に含まれそうな現象があった。1-2で負けた前日も、この日も、攻撃前の円陣がなかった。選手個々にデータの伝達はしていたが、束になって相手を倒すための儀式がない。円陣を組めば、いい結果になるとは限らない。ただ、輪になって確認する時間があっていい。原監督は「個々(の不振)はあるだろうが、みんなでカバーしないと」と、打開策はチーム総合力と言った。

 円陣は、打撃コーチだけの問題ではない。守備コーチが選手を集めてもいいし、投手コーチが「頼む、打ってくれ」と野手に声をかけてもいい。セクショナリズムに縛られずに、泥くさく、必死に、1勝を目指すべきだ。【金子航】

 ▼打順を変更した巨人は完封負け。巨人が前の試合から投手を含む8つの打順を変更(偵察要員は除く)は06年10月15日ヤクルト戦(同打順は2番鈴木だけ)以来だが、前回も完封負けだった。これで完封負けは今季6度目となり、4月だけで5度目。巨人が月間5度の完封負けは、59年5月、60年4月、64年8月、79年7月、89年9月と並び6度目の球団ワーストタイ記録だ。4月の完封負けはマツダ2度、甲子園2度、神宮とすべて敵地。ビジターの巨人は今季3勝10敗で、得点合計が21点。1試合平均1・6点と、ビジターでは打てずに4月7日以来の6位転落。10試合以上消化時の単独最下位は06年8月4日以来となった。