<広島3-2中日>◇17日◇マツダスタジアム

 まさに劇的だった。広島がサヨナラスクイズで5連勝を決め、念願の貯金1を手にした。2点を追う9回、中日の守護神岩瀬を攻略。同点に追いつきなおも1死満塁。石原慶幸捕手(32)が投前へスクイズを決めた(記録は安打)。めったに見られない「技」は、セでは94年の広島以来18年ぶり。3位ヤクルトにもゲーム差なしと肉薄した。

 マツダスタジアム全体が劇的なサヨナラ勝ちに酔いしれた。采配がズバリの広島野村謙二郎監督(45)は開口一番に「しびれたね」と、興奮気味にまくし立てた。

 中日の継投に抑えられて無得点のまま9回を迎え、しかもマウンドには守護神岩瀬。絶体絶命でもあきらめなかった。堂林と代打迎の中前適時打で同点とし、なお1死満塁。石原がカウント1ボール1ストライクから外角の球に必死にバットを差し出した。投前に転がると、三塁走者堂林が満面の笑みで本塁に滑り込んだ。

 チームメートに手荒い祝福を受けた石原の頭は真っ白だった。「(球種を)本当に覚えていない。自分で決めようと思っていた。何としても転がそうと、それだけ考えていた」と笑いが止まらない。

 石原が打席に向かう前、野村監督が「秘策」を耳打ちした。「ネクスト(サークル)で(スクイズが)あるよ、と話していた。こういう勝ち方は乗っていけるね」と同監督もしてやったりだ。セでは94年広島以来のサヨナラスクイズ。そのヤクルト戦で「1番遊撃」で出場していた野村監督も、当時を思い出しながら、サインを出したのか。まさに、温存していた秘策だった。

 同点に結びつけたのは若手と苦労人だった。堂林は1点目の適時打をたたき出し、迎は代打で同点の中前適時打を放った。指揮官が「キーマン」と話す迎は、本拠地でのお立ち台に興奮気味。「1打席が多いのでそこで結果を出したかった。しっかり振っていくことを意識している」と、まくし立てるように話した。

 これで5連勝。7月に入って11勝2敗と絶好調だ。誰がヒーローになってもおかしくない状態で、3位ヤクルトともゲーム差がなくなった。今日18日の結果次第で、3位でフィニッシュした97年以来のAクラスターンとなる。【中牟田康】

 ▼広島は逆転サヨナラ勝ちで貯金1。広島が前半戦を勝率5割以上で終了するのは、02年(35勝33敗1分け)以来、10年ぶりだ。サヨナラ打は石原のスクイズ(記録は投安)。サヨナラスクイズは96年9月16日諸積(ロッテ)がオリックス戦で記録して以来。セ・リーグでは94年8月13日仁平(広島)がヤクルト戦で記録して以来、18年ぶり。仁平は7-7の延長14回、1死満塁から決めた(記録は投安)。なお、今季の広島は4月8日に梵が先制スクイズを決めており、スクイズのV打は今季2度目。