<ヤクルト0-12阪神>◇27日◇神宮

 阪神期待のルーキーがようやく輝いた。「7番右翼」で先発したドラフト1位の伊藤隼太外野手(23)が5回、ヤクルト松井光から右翼へプロ1号を放った。プロ35打席目に飛び出したうれしい1発は、阪神新人では創設年の36年伊賀上良平以来、76年ぶりの満塁弾だ。慶大時代に10本のアーチをかけた思い出深い神宮で、プロとして派手な足跡を残した。

 快音が響いた瞬間、スターの素質が垣間見えた。内寄り140キロ直球。伊藤隼は会心の打球を右翼席中段まで打ち込んだ。黄色いメガホンが大暴れする中、笑顔でナインと抱き合う。たったひと振りで虎の歴史に名を刻んでみせた。

 伊藤隼

 素直にうれしいのひと言です。入ってくれと念じて必死で走って。いつ入ったのか分からなかったけど、歓声が聞こえて真っ白になりました。

 5点リードの5回。2死二、三塁から代打金本がストレートの四球で歩く。虎党のブーイングに近い叫びが響く中、2死満塁で打席に立った。「異様な雰囲気でしたが、自分の打席に集中しました」。2ボール2ストライクから松井光の5球目、本人も学生時代に記憶がないという満塁弾はプロ初アーチだ。1軍17試合目、35打席目でメモリアル弾。阪神の新人選手では2リーグ制後、史上初の満塁弾をぶち込んだ。

 伊藤隼

 神宮は大学時代、自分を育ててくれた場所。縁があるんですかね。

 キャンプは1軍でスタートし、開幕1軍も勝ち取りながら、2度の2軍降格を経験。それでも、へこたれない。1度目の降格後、インパクトの瞬間に首が寝る悪癖を修正。2度目の後は立石2軍打撃兼育成コーチとともに、スイングの軌道を改良した。三度目の正直で25日に再昇格。この日は左の村中相手に先発起用され、首脳陣の期待に応えてみせた。

 伊藤隼

 このホームランを機に、じゃないですけど、来季につながるようにやっていきたい。まだまだ何もかも下手くそですけど、一生懸命やるので応援よろしくお願いします!

 下位に沈む虎にまた1人、希望の星が流れてきた。【佐井陽介】