ハヤタよ金本を目指せ!

 阪神は20日、高知・安芸での秋季キャンプを打ち上げた。25年ぶり現場復帰した掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)も充実感たっぷり。安芸滞在中の夜間マンツーマン練習を皆勤した2年目の伊藤隼太外野手(24)には、OBの金本を手本に挙げて成長を促した。小バース森田ら若手にとって、ミスタータイガースの教えは最高の刺激になった。

 打ち上げの日も、打撃ケージの後ろから大きくうなずいた。掛布DCの目の前で伊藤隼が快音を響かせる。飛球が目立った前日とは打って変わってライナーを連発。キャンプ序盤のように身ぶり手ぶりで教える光景がないのは教えが浸透している証拠だろう。

 「ハヤタとは夜、一番やったな。彼は非常に(球に)合わせて打ちたがる。試行錯誤しながらお互い話し合ってね。昨日の夜も…」

 芸西村内のホテルに用意された「掛布部屋」で1対1で指導した。真剣に向き合う2人だけの空間。前日19日のラストナイトは「もう失敗を怖がるな!

 自分の間合いで打て!

 球に合わせるのじゃなくて」と諭す。ドラフト1位の逸材を「野球自体が小さくなっていた」と分析し、模範として同じ左打者の大物OBを挙げた。

 「金本は自分のタイミングで球を引きつけて打つ。崩れる金本を見たことがない。自分の打つところに球を呼び込んで、自分のスイングをする方がいい。ハヤタとも意見が一致した」

 このキャンプで伊藤隼の特長を「強いよ、体が」と見抜いていた。鉄人金本とダブる鋼の肉体は、猛練習に耐えられるのが何よりの長所。「ハードパンチ」の打撃も似る。共通点もあり、理想として示した。

 今季、打率1割4分5厘に終わった伊藤隼のこだわりを尊重しつつ、最善の道を説いた。伊藤隼も「最終的な方向性、目指すべき方向性は決められた。将来的にクリーンアップ、3番を打ちたい」とキッパリ言う。密度の濃い練習をこなしたからこそ、掛布DCも強調する。

 「監督も言っていたけど、12月、1月の過ごし方がすごく大切。つかみかけたものを手放すか、自分の手でつかむか」

 持論を押しつけず、対話重視の姿勢は若手のハートをグッとつかんだ。若手育成と強虎復活を託されたミスタータイガースの第1歩は、力強かった。【酒井俊作】