<西武8-8日本ハム>◇16日◇西武ドーム

 珍事連発の総力戦はドローだった。日本ハムは延長12回、5時間48分の今季両リーグ最長試合で西武と引き分けた。1点を追う9回、小谷野が三塁ベースに当たる幸運な適時打で同点。ベンチ入りの野手を使い果たし、指名打者も解除したため、延長11回に投手増井が打席でフルスイングするなど、23選手を送り出すまさに総動員。両チーム計28安打、25四死球、38残塁の壮絶な戦いは、今季2度目の引き分けに終わった。

 報道陣に囲まれた栗山英樹監督(53)は、逆質問した。「何時間やったの?」。答えは、今季両リーグ最長の5時間48分。「珍事」満載のシーソーゲームは、痛み分けで幕を閉じた。「最後まで、何とかするんだというのが伝わってきた。負けちゃいけないという空気が出ていた。勝ち切らなきゃいけないけれど、勝ちに等しい引き分け」。緊迫したシビアな展開あり、スリルあり、ラッキーあり、“波瀾(はらん)万丈”の超大作を振り返った。

 発端は1点を追う9回1死一、二塁だ。小谷野のボテボテの打球が、三塁線に転がった。おあつらえ向きの併殺コース。「終わったと思った」と小谷野も腹をくくった。だが、コロコロ…コツン。ボールはベースに当たって大きくはね上がり、グラブを構えていた浅村の頭上を通過した。二塁走者の杉谷が同点のホームに生還し、延長戦へと突入したのだ。

 珍事は続く。総力戦。そして、誰もいなくなった。延長11回2死満塁の絶好機。打席には4番…だが、バットを振る姿がどこか頼りない。それもそのはずだ。足に不安を抱える中田を下げ、すでにDHを解除していたため、4番に入っていたのは投手の増井。「(大谷)翔平いないのかって、10回くらい聞いた」。栗山監督は冗談交じりに回顧したが、今日17日に先発する大谷は、すでに宿舎へと帰っていた。

 しかし、増井は燃えていた。直前の10回、西武の新人・森に同点弾を浴びたのは自分だ。「点を取られたので、取り返すチャンス」。打席に立つのは、先発をしていた頃の10年以来4年ぶり。2球で追い込まれたが、バットを握る手に力を込めた。実は、通算打撃成績5打数2安打の好打者…投手陣の中では。1ボールを挟み、4球目。外角145キロの直球に、バットを折られながらも食らいついた。一塁へ、全力疾走。結果は二塁ゴロだったが、戦う姿勢はチーム全体に波及した。

 今季最多17安打を放ち、同ワーストの16与四死球。14日ロッテ戦で右肩前方の張りを訴え降板した谷元と、登板を翌日に控える大谷をのぞけば、実質使える選手はすべて使い切った。ダメージも大きいが、一時5点差をつけられた「負け試合」を、粘ってドローに持ち込んだ。栗山監督は「こういう試合だと、ゾーンに入るというか、集中してやれる。今日はみんなうまくなった」。西武ドーム名物、ダッグアウト裏にある108段の階段。疲れた顔は、どこにもなかった。【本間翼】

 ▼西武-日本ハム戦は延長12回で5時間48分。パでは昨年9月4日の日本ハム-ソフトバンク戦(12回=6時間1分)に次ぐリーグ歴代2位の長時間試合となった。プロ野球最長は92年9月11日阪神-ヤクルト戦(15回)の6時間26分。