ボクシングWBC世界バンタム級1位那須川天心(27=帝拳)が自ら編集長を務める不定期コラム「天心新聞」を日刊スポーツの読者にお届けします。9月27日、トヨタアリーナ東京で同級王者井上拓真(30=大橋)との再戦に向け、既に成田と大阪で合宿を実施。4月の元2階級制覇王者フアンフランシスコ・エストラダ(メキシコ)戦勝利後から計3度にわたる合宿で何を考えながら取り組んできたのか。那須川が自らの言葉で伝えます。第8回のテーマは「意味」です。
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エストラダ戦後、ジムワーク以外に合宿を3回やりました。5月中旬に大阪で2週間、5月下旬から6月上旬にかけて成田で1週間、6月下旬から7月上旬まで大阪で2週間。この合宿で僕が何をやっているのかを報告しようと思う。成田合宿はいつも急に言われて…本当に合宿とラブストーリーは突然なんだよなと(笑)。
成田ではゴルフ場で2部練習していて。朝6時から10キロの長距離走、午後はダッシュや短距離の切り返し、坂ダッシュ、1キロダッシュなど。毎回メニューが違うし、内容も始まる前に言われ「このタイム」と指定された時間でクリアする。瞬発系のメニューは得意だけど朝の10キロが苦手かな。ゴルフ場は起伏が相当あるし、ただ10キロ移動しているだけなんで(笑)。みんなは走ることにフォーカスするかもだけど、僕は走った後の1分間のインターバルでどれだけ回復するかを大事にしている。本当に今は疲労が残らなくなった実感がある。
自分の中でしっかりと意味を持たせて合宿メニューに取り組んできた。ボクシングは長いラウンドだし、10キロを走り切る集中力の持続は必要。気の張り方とか重要かなと。いかに力みを減らしてずっと走れるのか。やり始めた時は走りきるのがやっとで何も考えられなかった。しっかり回数を重ね、強くなっていることが分かってきた。
空き時間は本当に何もできないけど全部使い切らないといけないから。最初の頃の成田合宿は立てないぐらいだったし。あと筋肉痛はうまく筋肉が使えていない兆候だと思ってる。ケガした現象だけをとらえるけどケガする前をみていない。この動きをしたからケガをしたとか、そこは大事だと思うし、探るようにしている。
自分の考えだけど、何事をやるにも特に意味はないと思う。自分で意味をつくっていくことが大事っていう風に考えてる。広く言えば、生きることにも意味はないし。生きる意味をつくり、それが自分の人生をつくっていくことになるはず。走ることには「こういう意味がある」と意識することを大事にしてる。
大阪合宿は2回やりました。ボール投げ、やり投げ、1~2キロのおもりを持ってバランスを整えたり。ただ太い縄を真横に持ち上げて呼吸したり、逆立ちしたり。メニューは30種類ぐらい。めっちゃシュールに見える内容かもだけど。上下のバランスを合わせ、自律神経を整える。そうすると力じゃないものが生まれてくる実感がある。
例えば子供はブリッジがすぐできる。力を使わずにできるのは体の細胞と神経でやっているからだと思う。小さい時はすべてが新鮮だし新たな発見がある。でも大人になって気づきが減る。本当は減っていないけど、知った気になっているというか。「これは、こうだよね」という固定概念を、ずっと僕は壊す作業をしている気持ち。だから毎日変化があるし、驚くし、物の見方が変わる。
子供の時に知恵熱ってあるけど、それが合宿で急に起きる、最近も39度の発熱で一切立てなくなったり。寝ても寝ても眠さが抜けない。脳の情報処理が追いつかないことが毎日ある。でもジムワークに戻ると、今までできなかった動きができる。身体操作が良くなっていて。スムーズに動くようになっている。1月に大阪合宿した時、自分の「核」となるものができたと思えた。ぶれない自分の動き、意志や軸みたいなものができていた感覚があったし。
成田ではプラモデルみたいに必要な1個1個のパーツを鍛える。大阪では、そのプラモデルを体にくっつけてどう動かすのかに取り組む。ここで自分の中のものを鍛えないといけないし、常に自分と会話している。よく社会でも上司がどうだとか、人のせいにしがちだけど必ず自分にも原因があるし。そこを常に探っている感じ。2つの合宿があるから、僕のボクシングスタイルの成長は早いんじゃないかな。人は同じ時間を過ごしているけど、その濃さは人一倍、人二倍はあると思ってる。その積み重ねがあるから自信もすごくある。
拓真選手との試合が発表されましたね。この挑戦権は自分の手でつかんだというのが大きいかなと。ズルしたわけではないし、4月にエストラダ選手という強敵を倒して切符をつかんだ。誰にも文句を言わせないし、これで文句を言うのは、僕を嫌いな人だけかなと(笑)。挑戦権をつかんだだけでは意味がないんで。そこに自分の思いを乗せてリベンジして、さらにボクシング界を盛りあげていかないといけないとね。世の中的にも良いニュースがないと思うので、僕がニッポンを熱くしていこうと。みんなの何かしらの刺激になったらうれしい。(「天心新聞」編集長・那須川天心)
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