今年でプロレス実況15年を迎えたフリーアナウンサーの清野茂樹さん(45)が、プロレス本を出した。「コブラツイストに愛をこめて」(1600円+税、立東舎)だ。新日本プロレスを中心に実況アナを務め、15年には新日本、WWE、UFCの“世界3大メジャー”の実況を初めて達成。プロレス界では第一人者として活躍している。

清野さんは小学生時代に聞いた古舘伊知郎のプロレス実況のとりこになって、この仕事を志した。ラジカセで録音した古舘の実況を丸暗記し、小学校ではプロレスごっこの実況で腕を磨いた。青学大を卒業後、東京、地方とテレビ局の採用試験は全滅。96年4月にプロレス実況とは縁遠い広島FMに入社した。

しかし、そんな清野さんに転機が訪れる。新日本の広島大会のPRに来ていた蝶野正洋のトークショーの司会を担当。新日本とつながりができ、03年4月の広島大会で場内FMの実況を提案すると、それが通ってしまう。清野さんのプロレス実況のスタートだ。「実は、そのときがプロレスの実況は初めて。でも、全試合を1人でしゃべり続けた」と清野さん。

これを機に、新日本の実況に声がかかるようになり、会社を辞めて06年に上京。フリーアナウンサーとして活動するようになった。プロレス以外にも、K-1やDREAM、最近では大相撲、米国プロバスケットボールのNBA、東京五輪の新種目となった空手の実況も務める。

自身7冊目という本には、実況アナの仕事や、プロレスラーのエピソード。目標とする古舘伊知郎さんの実況への思いなどがつづられている。新日本のどん底時代を支えてきた棚橋と、駆け出し時代に励まし合った話。オカダ・カズチカの新日本デビュー戦となった内藤哲也戦の話など、実況アナならではの秘蔵エピソード満載だ。

本のデザインとなっている覆面レスラーに清野さんがコブラツイストを掛ける人形は、獣神サンダーライガー自作の粘土細工だ。楽しいプロレスラーの話、実況アナウンサーという職業の紹介も楽しいが、「プロレス実況アナウンサーになる」という思いを実現させた清野さんの生き方が、とてもステキだと感じさせる本だ。【桝田朗】