新型コロナウイルス感染症の影響で開催も危ぶまれた東京五輪だが、メダルラッシュにわいている。スポーツは結果がすべてではないと思うが、日本選手の金メダル獲得はやはり、うれしい。そんな世界的イベントを「たぶん、見ないです」と言い切った男がいる。WBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(29=BMB)だ。

寺地は9月10日、京都市体育館で同級1位矢吹正道(28=緑)との9度目防衛戦に臨む。同じ世界を相手にするアスリートとして、他競技のトップ選手に興味はないのか。聞いてみたが、変わらない柔和な表情で「ほかのスポーツは見ないんで。もっと磨いていかないといけないことは多い。ボクシングが大事なんで」と返してきた。

捉え方はそれぞれだろう。確かに他競技の選手の活躍に大きな刺激を受ける選手は少なくない。そこから交流が始まり、情報交換でお互いの成長につなげるという話もよく聞く。寺地はボクシングの世界だけに集中するというスタンスなのだろう。

ただ1点、「楽しそうですよね」と興味を示したのがダンスだった。ひとくくりに「ダンス」といっても、多くのジャンルがあると思うが、寺地はそれもボクシングにつなげて考えている。「ダンスを習いたいですね。体の使い方とか、いろいろ(ボクシングに)つながってきそうじゃないですか」。

かつて、フェザー級の世界主要4団体の王座を獲得したナジーム・ハメドというボクサーがいた。「悪魔王子」の愛称で、ダンスのようなリズムで変則的なボクシングで人気を博し、日本の元WBA世界ライトフライ級王者・山口圭司ら多くの“崇拝者”がいた。独特の雰囲気を持った選手だったと記憶する。

寺地がダンスを学んで、そのスタイルに変更するとは思えないが「個性」を求めていく姿勢は大事だと思う。五輪・パラリンピックの後、9月に行われる世界戦。寺地の新たな可能性も楽しみにしたい。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)