王座乱立で批判を受けているプロボクシング団体のWBAが25日(日本時間26日)、暫定王座を廃止する改革を発表した。同団体のヒルベルト・メンドーサ会長がオンラインで会見し「すべての暫定王座は終了した。暫定王者は指名挑戦者になる。次のランキングに暫定王者はいなくなるでしょう」と表明した。

WBAでは1階級だけでスーパー、正規、暫定、さらに一部にはゴールドと4種類の王座が存在している。その背景には、WBAが得る王座の承認料。また、世界戦を行う場合の「認定料」もそこに加わる。そんな裏事情が、一般のファンに受け入れられるわけがない。今回の改革の一案は、ボクシング界の正常化として素直に受け止めたい。

そもそも「暫定王者」とは。目的としては正規王者がけがなどで長期、試合ができないケースでまさに「暫定」として設置される。日本における世紀の一戦、94年12月のWBC世界バンタム級王座を争った辰吉丈一郎-薬師寺保栄。薬師寺が正規王者で、現役王者で眼疾を患って復帰した辰吉が暫定王者と日本人同士の初の王座統一戦としても、注目を集めて盛り上がった。

興行としてプラスをもたらす側面もあるが、最近の王者乱立ぶりはボクシングファンの理解を得られなかったはずだ。体重制のギリギリまで身を削って戦うボクシングにおいて、その団体の階級で世界王者はただ1人のはず。限られた椅子を求めて戦う過程に醍醐味(だいごみ)があるはずが、大人のエゴがその体系を壊しつつあった。

それでなくとも、新型コロナウイルスでボクシング業界は大打撃を被っている。無観客でも何ができるか。興行主は「従来」から脱した、新たな枠組みに挑むしかない。世界の主要団体も同じだろう。この苦しい時代で生き残るために、「暫定」廃止にとどまらない新たな試みが求められていると思う。【実藤健一】