今場所、いつも以上に混み合っているのが、国技館内にある相撲博物館だ。「55代横綱北の湖敏満を偲(しの)んで」と題し、故人にちなんだ貴重な品々が飾られている。幼少時や入門時のザンバラ姿の写真、横綱時代の化粧まわしなど、ついつい足を止め、見入ってしまう物ばかりだ。

 現在の館長は元横綱三重ノ海の石山五郎氏(67)。同じ出羽海一門で、8場所ながら同時期に綱を張った石山氏は「追悼の意味を込めてやることになった」と話す。同氏にとっても北の湖は特別な存在だ。

 「最初は連合稽古だったかな。彼が三段目から幕下に上がる頃。すごいのがいると。すぐ強くなると思ったら、あっという間に追い越された。馬力もあった。左四つの型もあった…」と、話は尽きることがない。

 展示物の中で、石山氏が特に懐かしがったのが、輪島、2代目若乃花と4横綱が並んだ写真。「私が最後に横綱になったんだけどね。ライバル意識が強かった。倒さなきゃ優勝できないんだから。そういう気持ちで頑張ってたなあ」。展示期間は、2月19日まで。初場所を観戦できない人も、本場所後は無料で入館できる。今は亡き北の湖との時間を共有してみては、どうだろうか。【木村有三】