西十両1枚目の大ベテラン豪風(38=尾車)が10日目で勝ち越しを決め、再入幕に大きく前進した。相手は、幕内のV戦線に残る碧山。土俵は中入り後の幕内。当たり勝ち、突き落とした。「勝ち越しまで長期戦になるなと思っていたんですが…」と振り返った。

 決意の春だ。東前頭13枚目の初場所で5勝10敗、十両に落ちた。05年夏場所から77場所、12年半守った幕内から陥落した。「糸が切れた。引退ってこういうものか、と」。それでも悩んだ。約2週間、稽古場に下りず自問自答した。2月10日のNHK福祉大相撲で、白鵬に声を掛けられた。「すっきりしたか?」-。「僕がすっきりした顔をしていたのか…」。出ていた答えを、教えてもらった。

 心機一転の今場所は、すべてを変えた。マウスピース、テーピングバッグ、部屋の照明…。02年秋場所の新十両記念に尾車親方(元大関琴風)から贈られたまわしを引っ張り出し、締めて臨んだ。「十両の土俵も立派。でも、十何年も幕内で相撲を取った人間が、1つ下で…。その土俵に上がれたのは、今は誇りですね」。夏場所初日の5月13日には「38歳10カ月」。再入幕となれば、昨年九州場所で安美錦が記録した「39歳」に次ぐ、2番目の年長記録(昭和以降)になる。【加藤裕一】