西幕下49枚目貴公俊(21=貴乃花)は、自然と笑みをこぼした。春場所中の付け人への暴力行為により下った、夏場所出場停止処分。その処分明け最初の取組で、東幕下49枚目琴欣旺を寄り切りで破って白星を挙げた。「久しぶりに緊張した。(休場は)1場所だけど懐かしい感じがしました」と本土俵に立った喜びをかみしめた。

 立ち合いで鋭く踏み込み、一気に寄り切った。圧勝にも見えたが実は取組直前、土俵に上がろうとした時に右膝が外れるアクシデントに見舞われていた。しかし、その場で自分ではめ直して土俵に上がった。「気合が張りすぎました」と、気持ちが空回りするほどに力が入っていた。

 しかし謹慎中、気持ちは落ちに落ちていた。そんな時、スマートフォンでインターネットを見ていると、10年に起こった大相撲の野球賭博問題の記事が目に入った。記事を読んでいるうちに、謹慎処分を受けながらも今なお、幕内上位で活躍する先輩力士の存在を知った。「僕と同じように謹慎を受けても、上位で活躍しているのに励みを受けました」と発奮材料にした。

 当然、これでゴールではない。「結果を残して残念な気持ちにさせた親方、ファンの方に恩返しがしたい。心も体も強い力士になりたい」。まずはみそぎの場所を全うする。【佐々木隆史】