東十両14枚目常幸龍(30=木瀬)が再び関取定着へ奮闘している。秋場所13日目のこの日、西十両6枚目豪風(39=尾車)を破り8勝5敗。2015年九州場所以来の十両勝ち越しを決めた。

14場所ぶりの十両復帰でも気負う様子はない。「けがする以前との変化は特にない。普通ですよ」。11年夏場所の初土俵から、5場所で十両昇進。4年前の秋場所で小結まで昇進したが、右膝のけがの影響で三段目まで番付を落とした。三役経験者が三段目陥落後に十両へ返り咲くのは明治以降では初となる。

無給の幕下では生活費だけでなく、リハビリのための治療費も負担となった。ただ、貯金を切り崩す生活に、真美夫人(32)は文句も励ましの一言も発しなかったという。「僕たちは土俵の上で結果を残すしかない、と分かってくれていた」。相撲に口を出さない妻がありがたかった。

長男心絆(しんば)ちゃんは4歳、2月に生まれた次男日彩(ひいろ)ちゃんはハイハイができるようになった。心絆君は相撲が分かるようになったが「テレビで見た方がきれいなので」と照れ隠し。十両定着、さらに幕内復帰へ。今は十両の中で番付最下位。幕下の足音が聞こえなくなったときに、自信を持って家族を招待したい。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)