11月13日に福岡国際センターで、一年納めの大相撲九州場所が開催される。熊本出身でご当地場所となる大関正代(30=時津風)は、10月23日に自身の大関昇進披露祝賀会に参加。九州場所に向けて「(九州)出身としていい相撲を見せたい。いい成績で終えられるようにしっかり調整したい」と意気込んだ。

正代とは言えば、よく“ネガティブ”の代名詞がついてまわった。実際にネガティブな発言が多く、温厚な性格がゆえに、報道陣からもネガティブ思考について少しいじられるような形で取材を受けることも多々あった。ただ、20年秋場所で初優勝して大関に昇進して以降は自信をつけたのか、本人の口からネガティブな言葉が出ることは少なくなったように思えた。

コロナ禍になって、本場所中の取材はオンラインで行われるようになった。取組を終えて帰り支度を済ませた力士は、任意でパソコン画面の前に立って報道陣の質問に受け答えしている。その日の取組に負けたらオンライン取材に応じない力士が多い中、正代は勝っても負けてもオンライン取材の場に現れた。ただ、2日目から9連敗して早くも負け越しが決まってしまった秋場所だけは、オンライン取材の場に現れなかった。

秋場所以降、久しぶりの公の場となった自身の大関昇進祝賀会で、秋場所中の対応について話題を振られた。すると正代は「記者さんにあたりそうになったので。メンタル的に整理できてなくて」と即答した。止まらない連敗、九州場所では自身5度目のかど番、周囲からの声、などなど。簡単には受け止めることができない現実に直面した当時の心境を明かした。この心境にうそ偽りはないと思った。本当にそう思ったのだろう。ここまで正直に答える力士も珍しいと思うと同時に、きっぱりと答えた姿に正代のメンタル的強さを垣間見た気がした。

当然、気持ちを強く持つだけで急に強くなれるわけはない。ただ、ポジティブな気持ちは絶対に有利に働くと記者は思う。正代は祝賀会で「優勝争いを先頭で引っ張りたい。今日祝賀会に来た皆さんがパーティーに来て良かったと思えるようにしたい」と意気込んだ。大関に昇進してからの2年間、優勝争いに絡むことができず歯がゆい場所が続いてきた。秋場所での11敗は大関に昇進して以降ワースト。これ以上ない逆境を乗り越えられるかどうか。“ポジティブ”正代なら、きっとやってくれそうだ。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

正代(2022年9月24日撮影)
正代(2022年9月24日撮影)