2度の左膝の手術を乗り越えた元十両の王輝(27=錣山)が、5場所ぶりに本場所の土俵に帰ってきた。西序二段76枚目で四番相撲に臨み、廣瀬(荒汐)を力強く寄り切り4勝目を挙げた。ストレート勝ち越しを決めても「まだまだですね」と満足はない。土俵に立てる喜びをかみしめながら「勝ち負けではなく自分の相撲を取りきる」と誓った。
今年1月の初場所で「令和の怪物」こと落合(現・伯桜鵬)と対戦する予定だったが、当日の朝稽古で左膝を負傷。脱臼や膝蓋(しつがい)骨の腱炎(けんえん)などの重傷で、計2カ月間の入院生活を余儀なくされた。師匠の錣山親方(元関脇寺尾)や兄弟子たちから「無理をするな」「焦らずやりすぎないように」と言われて気持ちを奮い立たせ、地道なリハビリで復帰にこぎつけた。
やり残したことがあるからこそ辞められなかった。初土俵から7年かけて20年秋場所で関取となり、昇進場所は15戦全敗。新十両として史上初の屈辱だった。同学年の大関貴景勝や阿武咲らの背中を追いかける、味わった悔しさを晴らすことも現役を続ける原動力だ。もう二度と同じけがをしないよう細心の注意を払いながら、まずは元の地位に戻ることが目標。一歩ずつ階段を上る。【平山連】