大相撲の一部観客のマナーが悪くなっている。そんな声をよく聞くようになった。
大相撲を70年以上も見続けている元NHKアナウンサーの杉山邦博さん(95)は「相撲を愛する人たちの声援ならいいけど、個人に対する気持ちが先に出すぎて、結果的に行きすぎの応援になっているように思います」と指摘した。
力士が最大限に集中する立ち合いの直前。会場中の視線が土俵の中央に向かう時、静まりかえるはずが、やじで台なしになることがある。声をそろえての「コール」や手拍子は、大相撲には向かない。今場所は「ワカタカハゲ~」というひどいやじもあったと聞く。
実は、これらを問題視している現役の幕内力士もいる。ある力士は「ひどいですね。僕は手拍子は好きじゃない。それが僕の応援なら、嫌な気持ちになります。お客さん同士のやじのやりとりがあったり…。僕らは相撲を取るだけですが、気持ちはよくない。みんな思ってると思う」と言った。
別の力士は「やりすぎの声援は、相手に失礼。そういうのは、お客さんも考えていただければ。酔っぱらっていたのかもしれませんが、たまり席から聞こえることもありました」と漏らした。
また別の力士は、こんな考えを示してくれた。「変なことを言って笑いが起きる時がある。本人はうけていると思っているのかもしれませんが、他のお客さんには失礼になっていることがある。お客さんも文化の1つを作っている。そういうことも周知してもらえれば…。能町(みね子)さんはXとかで言ってくれてますよね」。この力士は、相撲人気が高まっていることも一因だと口にする。新規の観客が増えたため「そういうマナーを知らないお客さんもいるんじゃないですか」。
関取最年長40歳の玉鷲にも意見を求めた。すると「ロンドン(公演)を見てるから、みんなそう思うのかもしれない。ロンドンはマナーがすごい。本当にすごい。立ち合いで静かになって、その後の拍手もすごい。それを、みんな見てるから」と力士側の視点を説明した。
気楽に楽しみたい娯楽であると同時に、力士たちが命がけで戦っている神聖な場であることも忘れたくはない。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


