9日の公開練習日、1つの結論を口にした。「自分は足ありきのボクサー。試しながらいろいろ勉強して、いい経験となって、やはりこのスタイルでいこうと定まった」。巧みなステップで、好機に左を打ち込む。理想は元3団体統一世界スーパーフライ級王者ダルチニャン(オーストラリア)を迎えたV1戦。超大物を空転させた。前後だけでなく、左右のフットワークを入れ、最小限の動きでかわし、強烈な左を見舞った。逃げではない。足さばきで空振りさせるボクシングの面白さを体現し、KO寸前に追い込んだ。長期防衛はそこから始まった。

 なぜ回帰するのか。攻撃の幅の広さを求めた結果、足を止めてパンチをもらう場面が増えた。V10のソリス戦では防衛戦で初のダウンを喫し、続くV11のモレノ戦でも。ネリは連打に威力を持つ。同じ轍(てつ)は踏めない。空振りで空転させることが理想。「このスタイル」が最善だった。

 計量後の高揚感があったのだろう。取材の最後、初めて自ら偉業に言及した。「明日は記録のかかる試合ですが、必ず勝ってみなさんに喜んでもらえるようにしますので、期待して下さい」。あのころのように、あのころより強く、金字塔を打ち立てる。【阿部健吾】

 ◆V1戦VTR 11年11月の王座決定戦で世界王者となり、12年4月に初防衛を迎えた。刺客は3階級制覇を狙うビック・ダルチニャン。相手を自由に選べる選択試合で、自らと世界王座の価値を高めるため、あえて最強挑戦者を選んだ。試合ではレイジングブル(怒れる猛牛)の異名を持つ突進に、足を使い強打をかわし、右ジャブをついた。4回までの採点ではリードされたが、5回に左で右まぶたを切り裂いて出血させ、8回でポイントも逆転。10回には左フックをかわしてワンツー、11回にもワンツーで棒立ちにさせた。判定は3-0(117-111、116-112、116-112)の完勝。マタドール(闘牛士)のように試合を制した。