王者井上尚弥(24=大橋)が「モンスター」の愛称にふさわしい圧勝KO劇で7度目の防衛に成功した。挑戦者の同級6位ヨアン・ボワイヨ(29=フランス)から左フックと左ボディーブロー連発で計4度のダウンを奪って3回1分40秒、レフェリーストップによるTKO勝ちをおさめた。既に同級で対戦相手が不在のため、18年から1階級上のバンタム級に上げ、世界3階級制覇を目指す意向を示した。

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 95年前に創刊され、ボクシング界では最も権威ある専門誌といわれる「リング誌」の最新ランキングで、井上尚は階級を超えた最強ボクサーランク7位に入った。日本のみならず、アジア勢でトップの順位だ。師匠・大橋秀行会長(52)は、6階級を制覇したスターのマニー・パッキャオ(39=フィリピン)の名を挙げ「尚弥を『日本のパッキャオ』にする」と強調。日本初の5階級制覇王者に育てるプランを思い描く。

 現在の練習パートナーは既に3階級上となるフェザー級の世界ランカーが務める。フィリピン人のWBO世界同級5位セルバニア(26)で、9月には同級王者バルデス(メキシコ)に挑戦。ダウンの応酬の末に判定負けを喫し、あと1歩で王座奪取を逃した実力者だ。同選手と激しく打ち合うスパーリングを見守る同会長は「間違いなくフェザー級まで世界王座を狙えると思う」と分析する。

 節制した生活を送りながらも、1年前は5キロだった減量が今は8キロまで増加した。まだ24歳。肉体の進化は着々と進む。18年春にはバンタム級王座に挑戦し、3階級制覇を狙う。同級王者としてビッグマッチの好機をうかがいながら防衛を続け、19年中には1階級上のスーパーバンタム級に転級。日本初の4階級制覇を狙うロードマップだ。大橋会長は「現時点で、スーパーバンタム級が尚弥の適正階級」と話しており、20年までは同級で防衛を重ね、そして21年には夢の5階級制覇へ-。同会長は「あっと驚くことをしたい」と、パッキャオに続く「アジアの至宝」に成長させようとしている。【藤中栄二】