ボクシングの元WBC世界バンタム級王者山中慎介氏(35)の引退会見が26日、都内で行われた。

 雪辱を期した1日の同級タイトルマッチで、前日計量失格で王座を剥奪された前王者ルイス・ネリ(メキシコ)に2回TKO負け。試合直後に引退を表明していたが、あらためて“卒業式”に臨んだ。

 「神の左」を武器に日本歴代2位の12度の世界戦防衛を達成。その強さの源泉はパンチの9割以上がストレート系という無類のスタイルを信じ、貫き続けたからこそだった。

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 「パパ、卒業おめでとう!」

 長男豪祐君(5)の言葉に、山中氏はこみ上げた。長女梨理乃(4)にもねぎらわれ、プレゼントされた似顔絵を見て「髪の毛薄いね…」と笑い、涙をためた。

 世界王者となり、結婚し、2人の子宝に恵まれた。11年11月から5年9カ月の長期政権。長く王者でいたからこそ、家族との幸福な卒業式を迎えられた。

 「15歳からボクシングを始めて20年、本日をもちましてボクサー山中慎介は引退します」

 中学校の卒業文集にはWBCの世界王者になると書いた。

 「12度も防衛できて、目標よりもはるか上の世界にいけたことには満足しています」

 ネリ戦は計量失格などもあり、理想の終わり方ではなかったが、「試合翌日もスッキリした気持ちでいれた。自分自身に勝てた」。集まった報道陣ら約150人を前に、晴れやかな表情で過ごした。

 思い出に残る一撃は、V2のロハス戦。7回にあごをとらえ、頭部から前のめりにリングに沈めた。

 「常にこれくらいのKOをしてやろうと思えた」

 その左拳「神の左」には「強かったよ」と声をかけた。

 今後は未定だが、「何事にもチャレンジしていく」と期する。記憶にも記録にも残る名王者がリングに別れを告げ、第2の人生を歩み出す。【阿部健吾】