ボクシングの元WBO世界ミニマム級王者山中竜也(23=真正)が31日、神戸市内で会見を行い、引退を表明した。7月13日の2度目の防衛戦で判定負けした後、会場を去り際に頭痛を訴えて同市内の病院に緊急搬送され、急性硬膜下血腫の診断を受けた。日本ボクシングコミッション(JBC)の規則で頭蓋内出血をした者はライセンスを失効することが定められており、引退を余儀なくされた。

山中は「最初は自分のことじゃないような気持ちでした。病名は聞いたことがあって“そういえば、先輩にそれで引退した人がいた”と思い、自分もそうなるのかなあと考えました」という。ボクシング歴12年でプロ生活6年。中卒のたたき上げで、同ジムの山下正人会長が「本当に努力の男。これからの選手に見習ってほしい」と評する男が突然、思わぬ形でキャリアを断たれることになった。

「これからのことはまだ全然考えてなくて。白紙? はい、そうです。でも、いつまでもブラブラしてたらあかんと思うので…」。ボクシングを始めるきっかけになった人気漫画「はじめの一歩」では、くしくも主人公の幕之幕一歩がパンチドランカーの症状を訴え、トレーナーの道を歩み出している。「ねえ、そうなんです」と苦笑いする山中だが、今後はトレーナーなどの選択肢も含めて、第2の人生を模索していく。