WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が兄弟王者による「豪華スパー」で最終調整した。3日に横浜市の大橋ジムで練習を公開。18日、英グラスゴーでIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)とのワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)準決勝を控え、WBC世界同級暫定王者の弟拓真(23)と軽めに拳を交え、ロドリゲス対策を確認。元号の区切りに、強い所属先の「縁」も継承し、日本人世界王者初の令和初防衛を狙う。

ヘッドギアなしの軽めのスパーリングでも、井上はピリピリ感を漂わせた。同じ階級の世界暫定王者で弟の拓真と2回の計6分間、IBF王者の動きを意識しながら試合感覚を養った。「技術戦になりますよ。フェイントの掛け合いだったり。どっちがペースを握るかとか。向こうもそういう選手」。ロドリゲスの動きをまねる弟の両拳を見極め、ハイレベルなWBSS準決勝をイメージした。

当初の予定よりも5日早く前日2日、アマチュアで200勝以上を挙げるWBOスーパーフライ級ユース王者KJカタラジャ(フィリピン)とのスパーリングを打ち上げた。他選手も含めて120回以上のラウンドを消化し、大橋会長も「調整は完璧」と言い切る仕上がりだ。試合まで残り約2週間。負傷に注意しながら実戦トレーニングを継続するには、現役王者の弟との軽めのスパーリングは最適だ。昨年の世界戦2試合は計182秒で終わらせた。「昨年の2試合とは違う面白さをみせたい」と自信の笑みも浮かべた。

平成最初の世界王者はWBCミニマム級王座を奪った大橋会長だった。そして弟拓真がWBCバンタム級暫定王座決定戦に勝ち、日本男子で平成最後に世界ベルトを獲得した。令和に入り、日本人世界王者として初めて防衛戦に臨むのは井上という巡り合わせに。大橋会長からも「令和の初防衛は井上尚弥で」と託された。階級最強を決める大舞台で、過去最強の敵と向き合う。「勝利は必ず。どんな形であろうと決勝にコマを進めたい」と表情を引き締めた。【藤中栄二】