“プロレスラーお助け隊”の出動だ。決して裕福ではない経営状態でありながら、常にチャリティー活動に力を入れてきたプロレスリング・ゼロワンがコロナ禍の中、再び立ち上がった。大田区のレンタカー会社「レッツレンタカー羽田空港店」とタッグを結成。外出制限で困っている老人、体の不自由な方らを対象に、5月7日から無償の送迎、買い物サービスをスタートさせる。

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“プロレス界で最も熱い男”こと大谷晋二郎(47)率いるゼロワンが、人助けのために立ち上がった。ゼロワンはこれまでも、いじめに悩んでいる人や被災者を助ける活動を続けてきたが、ウイルス感染のリスクがある今回は下手に動けない。そこで考えたのが、車を使った「お助け隊」活動だ。

大谷 テレビで、病院へ行きたいけど『往復のタクシー代がかりすぎて無理』と言っている方や、『宅配のお金がかかりすぎて頼めない』と言っている方の姿を目にして、「コレだ!」と思いました。すぐみんなに、相談して動き始めました。

コロナショックで使用車に余裕が出た「レッツレンタカー羽田空港店」とタッグを結成。選手が体温測定、マスク着用など感染防止に努めた上で運転手となり、高齢者や体の悪い方を対象に無償で送迎、買い物の手伝いサービスを行うこととなった。

依頼を受けた「レッツ-」の下瀬駿社長は「お話をいただき、大谷選手とお会いするまではプロレスラーは怖い、というイメージでした。でもお会いしたら優しい笑顔で礼儀正しくて。『困った人のためになりたいんです!』の言葉に胸打たれました」。大谷の姿に心動かされ、協力を決めた。

ゼロワン自体も興行再開の目処が立たず、苦しい状況にある。それでも大谷らがチャリティー活動に励むのは、それがプロレス、プロレスラーの強さと魅力を伝えることにつながると信じているからだ。大谷は「僕の思うプロレスラー像は、強くて優しい。今は試合ができず、選手も力がみなぎっている。どんな重たいものでもドンと来い!です」と自らを奮い立たせた。

お助けの対象は、病院への足がない、高齢でテイクアウトを取りに行けないなど困っている方。出張範囲は都内の中央、港、品川、目黒、世田谷、大田の6区内と川崎市の川崎、幸、中原、宮前、高津の5区内。利用希望の方は、前日までにプロレスリング・ゼロワン 044-201-9750まで電話を。【高場泉穂】

◆大谷晋二郎(おおたに・しんじろう)1972年(昭47)7月21日、山口県山口市生まれ。92年に新日本プロレスに入団し、同年6月にデビュー。ジュニア戦線で活躍する。01年、橋本真也が創設した団体「ZERO-ONE」に移籍。05年から団体代表。主なタイトルはIWGPジュニアヘビー級王座、ゼロワン世界ヘビー級王座など。得意技は顔面ウォッシュ。181センチ、95キロ。選ばれし者だけが読める「プロレスの教科書」を持っており、時折リング上で教科書の言葉を披露する。

◆プロレスリング・ゼロワン 01年、新日本を退団した故橋本真也さんが「ZERO-ONE」を創設。04年に橋本さんが活動休止を発表し団体を去るが、大谷らが「ZERO1-MAX」として再出発。09年に現団体名に改称。21年3月14日に両国国技館で旗揚げ20周年大会を予定している。

<ゼロワンの主なチャリティー活動>

★いじめ撲滅運動 07年ごろからスタート。小、中学校、高校、商店街、ショッピングモールなどで無料興行を行い、いじめ撲滅を訴える。訪問した学校の生徒宅にホームステイすることも。09年、バラエティー番組「アメトーク」のゴールデン特番でこの活動が取り上げられ、依頼が増えた。

★被災地支援 11年3月の東日本大震災時は、すぐに水、生理用品など4トン分の救援物資を集め、車で直接福島・郡山市内の避難所へと届けた。同5月には宮城・亘理町で震災後初となるプロレス興行を無料で実施。試合と炊き出しを行った。16年4月の熊本地震時は、ちょうど熊本巡業中で市内で被災。翌日から、がれき撤去など力仕事のボランティアを行った。以来毎年熊本でチャリティープロレスを実施している。