WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(31=Ambition)が、世代交代を阻止するV2を飾った。日本人2人目の4階級制覇を狙った同級1位田中恒成(25=畑中)と対戦。8回1分35秒、TKO勝ちで、プライドを示した。9度目の大みそかで国内は負け知らずの8勝目となり、日本人の世界戦最多勝利を17に伸ばした。

<大橋秀行氏の目>

緊張感のある素晴らしい試合だった。田中はスピードを生かした最高の立ち上がりだったが、井岡はそれに慣れるまで、無理をせずに冷静に戦っていた。完璧なディフェンスで3回に見切ると、そこから、ノーモーションの左ジャブでペースを奪い返した。打ち終わりに田中の右ガードが下がるところを狙うのは作戦通り。実行しきるのは、キャリアのたまものだと思う。接近戦の技術もさらに上がっていた。大振りをせず、左右のアッパー、ショートの右フックを多彩な角度で当てる、理詰めのような戦いで追い詰めていった。

田中はスピードは抜群だが、野球のピッチャーにたとえると、160キロの直球を投げ続けているような印象で、もう少し緩急がほしい。ただ、勝つんだという気迫は見ている人に伝わったし、次につながる負けだと思う。コロナの影響で明るい話題が少ない1年だったが、最後に見ていて気持ちいい、これぞボクシングという試合を見せてもらった。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)