世界最速16戦目での4階級制覇を狙った挑戦者の田中恒成(25=畑中)が、王者井岡一翔(31=Ambition)に粉砕された。

カウンター気味の左フックで2度のダウンを奪われ、最後も左のショートを食らって8回1分35秒TKO負け。初黒星を喫した。

「完敗です。こんなに差があったのかとびっくりしました」。立ち上がりこそジャブのスピード、手数で優勢に映ったが、4回に偶然のバッティングによる鼻出血からペースダウン。5回、6回と倒され、逆転を狙った捨て身も世界戦19戦目を誇る王者のキャリアにあっさりはね返された。

対戦が決まってから「勝って世代交代」を繰り返し宣言した。自信があった。減量への不安がなくなり、土台から作り直した。父の斉トレーナーは「技術的なことは何もしていない。ストロングメニューばかり。いじめ倒した」と言う。ミット打ちとシャドーだけで1日20ラウンド。過酷なメニューに耐えて臨んだが現実の壁は分厚かった。

「悔いはないです。(井岡の力を)認めざるをえない」と話し、今後については「分かんない。負けたばかりなんで」。4階級制覇からの海外進出など描いたプランもすべて白紙。「日本のボクシング界を引っ張る」。その領域はまだ、遠かった。【実藤健一】