ボクシング全日本新人王決勝戦(21日、東京・後楽園ホール)の前日計量が20日、東京都内で行われた。

四国のジムから初の“全国制覇”を狙うのが、スーパーバンタム級の福永宇宙(23=黒潮)。リミット55・3キロでクリアし、「調整はうまくいきました。減量を考え直してうまく落とし、リカバリーもうまくいった」と自信を見せた。

昨年末に行われた西軍代表決定戦でMVPを獲得した。「四国(のジム)初の(全日本)新人王を目標にやってきた」という夢への王手。ジムにもプロ選手は自身1人だけ。過去には同ジムから2人、決勝に挑んだが頂点はかなわなかった。過酷な環境を乗り越えて全日本を制する。だからこそ挑む価値がある。

ジムにとっても、30年越しの悲願となる。1981年に先代の小川純平会長が作り、17年から竜司会長が引き継いだ。出会いは福永が20歳の時。「遊び程度に練習に来ていて、サンドバッグを打たせたら筋がよかった。ストレート系をきれいに打ってたんで、やってみんか、と」。

伸びしろしかなかった。中学で野球、高知工では柔道をやり、卒業後は建築関係の現場仕事についた体は自然に仕上がっていた。小川会長は「最初から下半身が強い感じを受けた。強いパンチを打てる」。しっかりした土台にキャリアを重ね、「試合をやるたびに強くなっていった」と会長は振り返る。

今回、対戦相手の矢斬は初めてのサウスポー。大阪への出稽古で左対策を積んできた。「大阪に出稽古は今回いつもより、1週間多めに(3週間)行っていた。1週間で20ラウンドぐらい。(十分積めた感覚は)はい、ありますね」と自信を口にする。

地元も盛り上がる。高知の観光名所の「ひろめ市場」や福永の地元小学校ではパブリックビューイング(PV)を実施する。「自分の仲間もジムで応援してくれているし、本当に自分の知らないところでもそうですし。会ったことない人まで自分のことのように応援してくれる。1つと挙げられないほど応援してもらっている」と福永も熱い思いを感じ、背負う。

「やっぱり全日本決勝で気持ちは乗っている。お互い譲れない中での試合になる。楽しみながらも、最後は自分が勝つという強い気持ちをもってやるしかない。もう今までやってきたことを信じて、自分の力を精いっぱいだすだけです」。聖地・後楽園で四国初を成し遂げる準備は整った。【実藤健一】

◆福永宇宙(ふくなが・そら) 1997年(平9)11月4日生まれ、高知・四万十町出身。小学校でソフトボール、中学で野球、高校は柔道。ボクシングは遊びで行った黒潮ジムで小川会長にスカウトされた。身長168・5センチの右ボクサーファイター。戦績は6勝(3KO)無敗。

◆四国のJBC加盟ジム 高知の黒潮ジムのほか、愛媛のフォーラムスポーツジム、升田ボクシングジム、徳島の川田ジムの4つ。