アマチュア時代の16年に大麻所持の事件を起こし、5年近い謹慎生活を送っていた湯川成美(25=駿河男児)が念願のプロデビュー戦を飾った。「うれしいという気持ち、楽しみという気持ち」との思いを胸に秘めてリングに向かい、プロ11戦目の東祐也(21=北海道畠山)と拳を交え、3-0の判定勝ちを収めた。手数の多い連打の東をサウスポースタイルからボディー攻撃、左右のアッパーの有効打で攻め込み、アマチュア最後の試合から約4年10カ月ぶりのリングを満喫した。

大阪・堺市出身の湯川はアマチュア時代、ウエルター級で15年に国体3位、全日本選手権5位に入賞。アマ戦績も38勝(22KO)13敗と高いKO率を誇ったが、大学3年時の16年に大麻所持で逮捕された。執行猶予3年の実刑判決だった。大学を中退し、静岡県に移り住み、ごみ拾いなどの奉仕活動を続けながら、現在の所属先でジムワークを続けてきた。

執行猶予期間終了後にプロ活動を認められ、19年12月にB級プロテストに合格。この日のプロデビューとなった。謹慎期間中、所属ジムの前島正晃会長が中心となってリング復帰への署名活動も行われ、バックアップを受けてきた。所属ジムのSNSを通じ、湯川は「辞めようと思ったこともありますし、辞めると決めたこともあった。ただボクシングでしか(恩を)返せないし、(辞めたら)迷惑をかけてしまったたくさんの人たち、ボクに救いの手を差し伸べてくれた人たちに何も返せない。ボクシングを続けることにしました」と長い謹慎生活を振り返っていた。

目標は3年後の世界王座獲得、さらに「1度や2度人生で落ちてしまった人が救える何かができれば」とボランティア団体の設立を掲げている25歳。約5年という謹慎期間を経て立ったプロの舞台で、ボクシング人生の再スタートを切った。