新型コロナウイルス感染拡大防止で、25日にも緊急事態宣言が発出されることになった。関西は大阪、兵庫、京都の3府県にわたる。「またもか…」。見えない敵を相手に、どうしようもないもやもやばかり募る。

1年前はすべての興行を中止にしたボクシング業界も直撃するだろう。元世界3階級制覇王者の亀田興毅会長(34)の3150ファイトクラブは、5月5日に真正ジムとの共同でエディオンアリーナ大阪第2競技場で初の興行を予定している。興毅会長は「会長としてのデビュー戦で正念場を迎えてますよ」と言った。

メインは弟の元世界2階級制覇王者・亀田和毅(29)の8回戦。1年9カ月ぶりと久々の実戦になり、和毅も「8ラウンド、フルで戦いたい。タイミングで倒れたらしょうがないけど」と実戦勘を取り戻すプランを描いていた。その前に目に見えない敵が、立ちはだかる。

日本ボクシングコミッション(JBC)の安河内事務局長は「(緊急事態)宣言が発出された段階で(対応を)考えたい」と話す。西日本ボクシング協会の会長でもある真正ジムの山下正人会長は、24日の世界戦を前に「JBCの判断に従う。無観客でとなれば、無観客でやります。選手が頑張ってきたことを無駄にはできない」と言った。

ボクサーは試合までにまさに「身を削る」。激しい練習を積み、厳しい減量に耐えてリングに上がる。その努力が「無」になってしまうのは、何とも表現する言葉がない。

興毅会長は「待つしかないですよね、JBCの判断を。興行していいのか」と話しつつ、発信の方法などさまざまな手も考えている。培ってきた人脈も幅広く、独自の経験値から逆に新たなチャレンジができる機会となるかもしれない。ピンチをチャンスに。若き会長の発想力と行動力に期待したい。【実藤健一】