思い入れのある地で連敗を止めた。内藤哲也(38)が、グレート・O・カーンとの27分に及ぶ戦いを制した。必殺技のデスティーノを連続で浴びせ、粘るO・カーンを沈めた。プロ野球・広島のファンである内藤。東京出身だが、年に何度かは球場に応援に行くこともある。「カープが好きなだけだが、広島をホームだと思っている」。右手を高々と突き上げ、ファンの応援に応えた。

中盤まではO・カーンの試合運びに苦しみ、あわや3カウントのシーンが何度も訪れたが、本能だけで返した。O・カーンに「椅子にでもなってもらおう」とコーナートップで顔の上に座られ「靴、おいしいか?」と踏み付けられた。首を絞められてロープに逃げ、相手のトレードマークの弁髪を引っ張って応戦することしかできなかった。それでも終盤決めにかかったO・カーンのエリミネーターを切り返し、逆転の3カウントを奪った。

今年1月東京ドーム大会で飯伏に敗れて2冠王者から陥落。目標を見失い、2月にはベルトに挑戦して敗れるなど、ふがいない戦いが続いていた。ターゲットを募ったが、納得の相手は見つからなかった。そんな中、今シリーズで3月のニュージャパンカップで敗れていたO・カーンに照準を定めた。「俺に勝っているから実力はあると思う。だからこそ指名した」。それでも前哨戦では、今月11日から10連敗。O・カーン率いるUNITED EMPIREの勢いに押され続けたが、ホームの地で勝利をつかみ、ようやく浮上のきっかけをつかんだ。

今年2月の広島大会では、当時IWGPヘビー級とインターコンチネンタル王者だった飯伏の2冠統一に待ったをかけようとしたが、失敗した。「逆転の内藤哲也を見せないと、また広島のお客さまの前でウソをついてしまうことになるから宣言をしっかり守る」。内藤はO・カーンとの対決を五分に戻し、カープは25日の試合で勝率を5割に戻した。「年末に振り返ったときに、この広島がきっかけだったと言われるように突っ走っていく」。カープとともに、内藤の逆転のストーリーが始まった。