ボクシングWBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔(32=Ambition)が25日、都内の日本外国特派員協会に招かれて会見した。昨年大みそかに同級1位田中恒成(25=畑中)を8回TKOでV2に成功も、ドーピング検査で禁止薬物の陽性反応があったと報道された。違反は認められずに処分はなかったが、日本ボクシングコミッション(JBC)のずさんな体制が明らかになっていた。

井岡はまず声明を読み上げた。「どんなひどい仕打ちを受けたか、知ってもらいたくて取材を受けてきた。人生が終わるのではという気持ちになった。形式的な謝罪では終わらせたくない。他の選手にも可能性があった。きっちり対応してほしい」と訴えた。続いて代理人の服部弁護士がずさんな検査体制の状況をスライドで説明し、質疑応答に入った。

検査ミスは意図的か単純なものかと問われると、井岡は「単純なミスと思うが、検体結果を警察に報告したことに悪意感じる。考えれば考えるほど、どちらにも」と答えた。

未来へ向けて水に流したらという考えには「それはそれ、これはこれ。王者としては止まらず、未来を目指して進んでいく。仕事でもあり別。水に流したり、忘れることはできない」と話した。

JBCの直接謝罪はまだ受けていない。服部弁護士は「内容を伴った謝罪を協議している」とした。陣営は日本プロボクシング協会に上申書を提出。現役員の退任、情報リークの原因追及、検査体制の整備、謝罪と名誉回復の4点を要望している。服部弁護士は「3点まではJBCも動いている。退任の権限はないので、JBCがどうするかを見ていくしかない」と話した。

賠償請求の考えを問われると、服部弁護士は「金銭要求しようという考えはない。大きな状況の変化がなければ変わらない」と答えた。

V3戦は9月1日に東京と、すでに海外メディアで報道された。WBOから指名試合を指令されていた同級2位フランシスコ・ロドリゲスJr.(27=メキシコ)が相手。入札を回避して合意したという。

井岡は「決まれば会見で発表する」と話すにとどまったが「試合をやりたいし、日本でも海外でもやるだけ」。東京開催となるとJBC管轄となるが「やるとなったらやるしかない。最低限の配慮をしてもらいたい。最善を尽くしてやっていくだけ」と話した。

服部弁護士は「指名試合であり、井岡もやりたい。試合に早く集中するためにも、早期に決着をつけたい。この問題から離れさせたい」と、JBCに早急な対応を望んだ。

また、井岡は東京五輪開催についても、質問を受けて言及した。「五輪を目指した選手として、選手はやりたくないと思う。スポーツの一番の祭典。感動を与え、心を動かせるが、世界を巻き込んでいる状況。やる側も見る方も不安の中でやるべきではないと思う」と、中止の考えを示した。

井岡のAmbitionジムは渋谷区内でジムを間借りしていたが、前日24日に目黒区内に新たにジムを構えた。7月15日付では志成ジムに改称して再スタートを切る。