WBC(世界ボクシング評議会)が昨年11月に新たな階級を作った。「ブリッジャー」という聞き慣れぬもの。あれからほぼ1年がたち、ようやく初代王者が誕生した。カナダ在住コロンビア人の同級1位オスカル・リバス(34)が、王座決定戦で同級15位ライアン・ロジッキ(26=カナダ)を3-0の判定で下した。
この階級の重量は90・7キロ(200ポンド)~101・6キロ(224ポンド)で、クルーザー級とヘビー級の間となる。WBCは昨年12月に20位までのランキングを発表。世界ランクは各階級で40位まで設定しているが、現在は32位までいる。
本来は夏にリバスが同級2位レリーナ(南アフリカ)と対戦予定だった。南アのコミッションが自国にないランキングに難色を示し、レリーナが負傷も重なって撤退。代わって同級3位ジェニングス(米国)に変更された。
コロナ禍で日程が延びた上に、ジェニングスがカナダ入国前に問題が起きた。PCR検査で陰性を理由に、契約義務のワクチン接種を拒否。カナダ政府の未接種旅行者に対する2週間隔離も拒否したことで、急きょ下位ランクのロジッキに変更された。
すったもんだの末の王座決定戦だが、階級設置当時から批判が渦巻いていた。ヘビー級は近年大型化進む中で「軽い」選手にもチャンスを与えたいのが創設の理由。安全面もあるだろう。しかし、あのムハマド・アリやマイク・タイソンも、世界王座を獲得した当時はブリッジャー級の体重だった。
ブリッジャーとは、ある少年の名前だ。昨年7月に4歳の妹が犬に襲われ、6歳の兄ブリッジャー君が体を張って救った。90針以上縫うことになった勇敢な行動に対し、WBCが王者として認定するベルトを贈った経緯があった。
ボクシングはギリシャの古代五輪にもあり、レスリングと一体の総合格闘技のようだったという。17世紀に復活も取っ組み合いの体重無差別級で時間無制限。賭けの対象となっていき、18世紀に拳で戦うなどルール化された。体格差があっては賭けにならないと、ヘビー級とライト級ができたそうだ。
その後、ミドル、バンタム、ウエルター、フェザー、フライ、ライトヘビー級と8階級になった。さらにスーパー階級(当時ジュニア階級)などに細分化され、最新は86年のミニマム級で17階級となった。主要団体は4団体あり、単純計算で68人の世界王者がいる。またさらに1人、ということだ。
クルーザー級やスーパーミドル級も、WBCが最初に創設した階級だった。世界戦を15回戦から12回戦にしたのもWBC。これまでもさまざまな改革を推し進めてきた世界最大の団体。ただし、今回に限っては、他の3団体は見向きもしていない。
やはりボクシングは無差別のヘビー級で、倒し倒されが一番の醍醐味(だいごみ)。その中で小柄なタイソンが出現したときは衝撃だった。大相撲しかり、柔道しかり。小よく大を制すという、格闘技の魅力は捨てがたいものがある。【河合香】


