第18回の「WWEの世界」は、日本女子プロレス団体スターダムでも活躍したトニー・ストーム(26)をクローズアップする。21年7月にスマックダウン(SD)に昇格。現在はSD女子王者シャーロット・フレアー(35)に食らいつき、王座挑戦のチャンスをつかもうとしている。今、女子部門でホットなニューヒロインだ。

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キュートな風貌で人気のトニー・ストームがリングネーム通りに「嵐」を起こしている。11月に入るとWWE主要女子シングル王座12度の戴冠を誇るSD王者フレアーに対戦を要求した。トップ級のトップを極める「女王様」との舌戦を繰り広げ、11月26日のSD大会(米グリーンズボロ)では大乱闘も展開。感謝祭(サンクス・ギビング)のため、テーブルに設置されたパイを2度も顔面に浴びた。フレアーのパイ攻撃で顔中をクリームまみれとなり、怒りに震える姿が全米に放送された。両者間には大きな遺恨が始まっている。

NXTから昇格し、今年7月からSD所属となったストームは「10歳の時から夢見てきた舞台。正直なところ、気持ちを言葉に表せないほど。今、その舞台にいて、想像していたことが実現した。格好良かった」とWWEのトーク番組のインタビューで感極まっていた。さらに王座挑戦への強い意欲を示し「私はSD女子王者になる。なぜここにいるのか? 私は時間を無駄にはしない。いつの日か、新しいチャンピオンになる」と高らかに宣言。積極的に王者フレアーに絡み、王座挑戦を狙っている。

野球帽をかぶり、ごつい革ジャンなどを着用するストームのコスチュームは80年代風をほうふつさせる。母からの影響だと明かし「母は80年代に育ち、音楽や文化についても話してくれた。幼少時代の私に、大きなインスピレーションを与えた。80年代の大ファンだからやりたいと思っていた」と明かす。キュートな風貌にワイルドな服装というギャップが、WWEファンの視線を集めている。

ニュージーランド生まれでオーストラリア育ちのストームは13歳でプロレスラーデビュー。日本女子団体スターダム所属を経て、17年からWWEに参戦した。WWE登竜門となる女子トーナメント「メイ・ヤング・クラシック」では17年大会に4強入り、18年大会では決勝でスターダム時代のライバル、紫雷イオを下し優勝を果たした。WWE傘下のNXT UK女子王座、NXT女子王座を獲得。満を持してのSD昇格となっていた。

SD昇格後は他レスラーたちに大きなサポートを受けているという。WWEドイツの番組インタビューで、ストームは「舞台裏でみんながクールで歓迎してくれ、助けてくれます。(SDには)何か特別なものがあるような気がする、良いムードが取り巻き、私は非常にエキサイティングになっている」と気持ちの高揚感を口にした。ロウ所属のかわいい系女子リブ・モーガンとともに、WWE女子で期待の新鋭となるストーム。近い将来、SD女子王者フレアーを振り向かせ、王座挑戦権をつかむ日も近い。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆トニー・ストーム(本名トニー・ロッサル)1995年10月19日、ニュージーランド・オークランド生まれ、オーストラリア・ゴールドコースト育ち。09年10月にプロレスデビュー。地元プロレス団体を経て、英国に渡って活動。16年から1年間、日本女子団体スターダムに参戦し所属。17年にWWEと契約を結び、NXT UKやNXTで活躍し女子王座を獲得。21年7月にスマックダウンに昇格し、ゼリーナ・ベガとのシングル戦で勝利した。21年9月には新日本プロレスのジュース・ロビンソンと婚約。165センチ、65キロ