ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28=大橋)が国内世界戦で初めて米グラント社製グローブを装着する。14日、東京・両国国技館で開催されるIBF同級5位アラン・ディパエン(30=タイ)との防衛戦(WBA6度目、IBF4度目=日刊スポーツ新聞社後援)で同社製の特注グローブを使用予定。6月の米防衛戦で初装着した際、左グローブのサイズが合わないハプニングに見舞われたが、今回は再採寸済み。2年ぶり国内防衛戦はフルパワーの両拳で臨む。

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最終調整の井上の両拳にはグラント社製の練習グローブが装着された。太田光亮トレーナーの持つドラムミットを確認しながら1発ずつ強いパンチを打ち込んだ。同社製グローブの感触を確認しながら、井上は「使いやすいですね。拳も痛めないと聞いているので」と手応えの表情。新グローブに慣れた様子をみせた。

同社製は6月の米ラスベガスで行われたマイケル・ダスマリナス(フィリピン)との防衛戦で初使用した。過去には元5階級制覇王者フロイド・メイウェザーをはじめ、元4階級王者ロイ・ジョーンズJr.、元4団体統一ミドル級王者バーナード・ホプキンス(すべて米国)も使用したグローブで、過去の名王者と同様のフルオーダーで製作。日本のウイニング社製から変更したテスト運転だったが「前回、ちょっとトラブルあった」(井上)という。

採寸したはずの特注品が試合当日に装着すると左拳に入らないハプニングが起こった。ウォーミングアップ時間がほぼなく、強引に左拳にグローブ装着した苦しい状況だったものの、その左拳から繰り出された左ボディーで3度ダスマリナスからダウンを奪って3回KO勝ちを収めた。「左(パンチ)は得意ですから」という井上は「(今回は)ちゃんと計り直しました。使いやすさはあるので」とグラント社製で初めてフルパワーの左を打てる喜びを口にした。

試合1週間前にリミット(53・5キロ)まで残り4キロ弱と減量も予定通りに進んでおり「もう仕上がっている」との自信を持つ。19年11月、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ決勝のノニト・ドネア(フィリピン)戦以来、2年1カ月ぶりの凱旋(がいせん)マッチは米仕様のグローブによる強打が見られそうだ。【藤中栄二】