世界最高峰の総合格闘技団体UFC(米国)は、今月9日、10日にシンガポール・インドアスタジアムにて有望株の発掘イベント「ROAD TO UFC」の1回戦を開催する。

世界進出を目指すアジア人ファイターをターゲットに、フライ級、バンタム級、フェザー級、ライト級の4階級でトーナメントを実施。勝ち上がった1人のファイターが、UFCとの契約を手に入れる。

日本からは7人の選手が参戦。現修斗世界フェザー級王者、SASUKEこと佐須啓祐(27=MASTER JAPAN)も、アメリカンドリームの実現を渇望する1人だ。

16年3月に修斗でデビュー。20年9月に修斗環太平洋フェザー級王座、昨年7月に修斗世界フェザー級王座に輝いたが、常に頭にあったのはUFCへの思いだったという。

格闘技を始めた時から思い焦がれた夢舞台。「やっと一歩手前まで来られた」と、かみしめる。始まりは師匠の弘中邦佳さん(45)。「師匠が挑戦して戦っていた舞台で、僕が格闘技を始めた時から『やっぱりUFCが本物だ』とずっと教えられてきました。緊張はないわけではないけど、すごくワクワクしている部分が大きいですね」。UFCからDREAMや修斗に参戦し、“逆輸入メジャーリーガー”と呼ばれた男の背中を追いかける。

今年は2カ月間、米国武者修行を敢行。ラスベガスではRIZINファイターの朝倉海とも練習をともにした。米国では「実戦を意識した練習をいかにしているかというところが違いだな」と、練習の質の差を痛感したという。「試合は自分の想定通りに進まない。パンチを効かされたり、いつもイレギュラーなことが起こる。いかに自分が不利になるようなシチュエーションを切り抜けるかが大切だと教えられました」。ふらふらになった時のリカバリー方法、回復までの時間のつぶし方。細かいシチュエーションまで想定した指導を受け、海外で通用する技と精神力を身に着けた。「新しい技術をうまく落とし込めた」と、自信を深めた。

9日には、中国のイー・ジャーと対戦。勝ちあがれば、9月の準決勝、年末の決勝と、夢への旅路は続いていく。一方で、1度負ければ契約は遠のく、熾烈(しれつ)なトーナメントでもある。それでも「気持ちは変わらない」と自然体を強調。「プロのキャリアの序盤で、大けが(上腕尺骨の骨折)をして2~3年くらい休んでいた期間がありました。なので、どの試合もここで負けたら終わりかなくらいの気持ちで戦っています」と、1戦への集中力は人一倍高い。

今大会はABEMAで完全無料生中継が実施され、注目度も高い。「正直自分がやりたくてやっていることなので、そんなに気にしていなかった」としながらも「日本代表という立場で試合をさせてもらえるのですごく光栄なこと。思いとか生き様とかを日本の格闘技ファンや見ている人に伝えられればと思っています」。初めての渡航も、既に大好きになったというシンガポールの地から、佐須がアクセルを踏みこむ。【勝部晃多】