ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が、異例のイメトレの成果を発揮し日本人初の3団体統一を成し遂げる。7日、さいたまスーパーアリーナでWBC世界同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)との約2年7カ月ぶりの再戦を迎える。最終調整の1カ月間は練習中に前回の対戦の映像を繰り返しチェックし、イメージを膨らませ、気持ちを高揚させてきた。6日に横浜市内で前日計量に臨み、井上はリミットの53・5キロ、ドネアは53・4キロでパスした。

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計量後のフェースオフ(にらみ合い)は12秒間、続いた。WBAスーパーとIBFのベルトを肩にかけた井上は、WBCベルトを持ったドネアに1歩近づき視線を合わせた。握手はなし。最後に一礼した5階級制覇王者を見送り「ドネアも調子が良さそう。こんなにワクワクする試合は久しぶり。明日は思う存分、暴れたい」と気合を入れた。

3日の公式会見で井上は「やるべきことは7日に向けてよりイメージを高め、自分の気持ちを上げていくこと。イメージをより高く試合当日を迎えることが大事」と口調を強めた。最終調整の1カ月間、異例のイメトレを続けた。19年11月のドネア戦の映像をジムにある大型テレビで流していたという。ロープを跳びつつ、筋トレをしながら前回対決を分析した。父真吾トレーナー(50)は「あれはナオ(井上)の発案。気持ちも入るし、確認もできる。ぐあっとかき立てるものがあるはず」と解説した。

7日の一戦はプロでは自身初のリマッチとなる。過去、井上がジムでの練習中に何度も対戦相手の映像をチェックすることはなかった。異例のイメトレで井上本人だけでなく、支えるトレーナー陣の気持ちも高揚した様子。真吾氏は「良い空気になった。試合が迫ってきているぞという気持ちのスイッチがみんなに入った」と強調した。

大橋秀行会長(57)は「尚弥が『のどが乾くこの瞬間が終わってしまうのは寂しい』と言っていた」と減量に余裕があったと明かした。井上自らも「本当に100点。かなり良く仕上がった」と手応え。2年7カ月ぶりに拳を交える因縁の相手。高校時代にあこがれ、技術も参考にしてきたドネアからの希望もあって実現した再戦となる。「(ドネアに)ラストマッチのような、意気込みや気迫を感じた。自分もそれ以上にしっかりと気を引き締めて」。前回以上の内容でドネアを倒すイメージはでき上がっている。【藤中栄二】

〇…39歳のWBC王者ドネアは落ち着き払った表情で計量クリアした。井上とのフェースオフ終了後、侍のように一礼して立ち去ると、水分や栄養補給のルーティンをこなし、減量で疲労した肉体を回復。「最高の気分、明日が楽しみだ」と口にした。2年7カ月前から希望していた井上との再戦を前に「井上が何を言っても、何をしても、どう見えても関係ない。気になるのはリングにいる井上だけ。超燃えている。最高の自分をみせる」と意気込んでいた。