WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(28=ワタナベ)が団体内王座統一に成功した。WBA同級正規王者エステバン・ベルムデス(26=メキシコ)との統一戦に臨み、8回24秒、TKO勝利で4度目防衛に成功。昨年3月の米初進出に続き、2戦連続で海外防衛に成功した。日刊スポーツ評論家で元WBA、WBC世界ミニマム級大橋秀行氏(57=大橋ジム会長)が、勝負の分かれ目などを解説した。

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たくましい姿を見せながら京口は敵地で防衛を成功したと思う。序盤からベルムデスの接近戦に巻き込まれそうになったが、左右両アッパーでほぼ解決していた。ショートアッパーを活用し、インサイドで打ち勝ったことで、スタミナを切らさず、自分のペースで戦えていた。

あの打ち合いのペースで標高1500メートルある高地グアダラハラでファイトしたら後半はスタミナ切れするのではないかと思われる。ベルムデスはスピードはなかったものの、終盤にかけて尻上がりで調子を上げ、強さをみせるタイプ。接近戦で打ち負けると風車のようにパンチを打ってくる。敵地では戦いにくい相手。普通ならペースを奪われて逆転されてもおかしくないが、そこを京口が打ち負けなかったのはアッパーが勝っていたからだ。これに尽きると思う。

試合中は多くのアウェーの「洗礼」を受けていた。バッティングはお互いさまなのに京口のみが減点。日本開催ならダウンと判断されておかしくない倒れ方もスリップだった。後頭部を打ったとさらなる減点もあった。しかし京口は不服も言わず、頭まで下げていた。普通なら怒ってもいいと思うが、冷静だった。ボクシング以外でもすごさを感じさせた。この強烈な「洗礼」はかけがえのない大きな経験になったと思う。高地だが、ほぼ息もあがっていなかった。今や高地トレも首都圏で簡単にできる時代。低酸素トレの成果も出ていた。

日本人が海外で普通に勝っていく時代になってきていると思う。京口は敵地を感じさせないような、ピリピリしすぎない生活で最終調整していたと聞いている。海外で戦う日本人世界王者も増え、普通に勝っていく時代になりつつある。京口の試合は、その手本なのかなと感じる。近い将来、寺地拳四朗との王座統一戦があるだろうし、すごく楽しみなカード。京口-寺地戦という世界ライトフライ級の日本人対決の機が熟したように思う。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)